『模倣密室 黒星警部と七つの密室』折原一(光文社文庫)★★★☆☆

北斗星の密室 「黒星警部の夜」あるいは「白岡牛」」★★★☆☆
 ――「警部、大事件です。牧場から牛が大脱走したと連絡がありました」「ああ、やれやれ」牧場に向かう途中、消防車が近づいてきた。「火事だという通報があったんでね」

 真相に気づくきっかけがほとんど連想ゲームみたいな頼りなさ(^^;。こうでもなけりゃこのコンビには解決できませんか。。。叙述トリック(?)部分が、ただのお約束みたいな感じでほとんど意味がないのと、死体をバラバラにした理由がちょっと弱いものの、こういう現在進行形のミステリって大好きです。
 

「つなわたりの密室」★★★★☆
 ――六畳ほどの部屋で男が仰向けに倒れていた。死んでいるのは疑いがない。「あ、あれ」と言われて見ると、部屋の隅には切断された男の頭があった。竹内刑事は黒星警部に電話した。「よくやった。密室殺人だな」

 三度殺された死体といい、真相のビジュアルといい、(悪趣味だけど)サービス満点の作品です。空前絶後の「首を斬る理由」ミステリとして孤高の光を放ち続けることでしょう(^^;。タイトルのダブル・ミーニングもお洒落というかお馬鹿というか。
 

「本陣殺人計画 横溝正史を読んだ男」★★★★☆
 ――あいつを殺してやる。財産を奪ったばかりか、大事な恋人を盗むなんて。殺人の舞台は、離れ家だ。まさに『本陣殺人事件』の間取りとそっくりなので、使わない手はなかった。

 お馴染み『本陣殺人事件』と「〜を読んだ男」シリーズのパロディです。黒星シリーズには珍しく、狭義の(つまり本来の意味の)パロディになっています。あり得ないトリックであり得ない計画を練るあたりがパロディのパロディたる所以でしょうが、そこはちゃ〜んとありそうな(?)結末が待っています。
 

「交換密室」★★★★☆
 ――「交換殺人ですよ。今さらあれはなしだなんて言わないでくださいよ。もう決めたことなんだから」そう言われても、酔っていた岩城にはまったく記憶がなかった。

 う〜む。。。相手が黒星警部じゃなかったら、あっさり捕まるような気もするが。計画を完遂するためには交換殺人のメリットを放棄せざるを得ないのが、完全犯罪計画としては弱い。
 

「トロイの密室」★★★★☆
 ――「ぜひ呪われた部屋を見ていただきましょう。あのベッドで寝た客人が三人も死んでいる。みな心臓発作のような症状だったらしい」

 ちょこっとしたことだけど玉川の性質に関する伏線がうまいです。密室のなかにいた容疑者は、さらなる密室ともいうべき棺に閉じこめられていたというサービス精神旺盛な密室。
 

「邪な館、1/3の密室」★★★☆☆
 ――どうやら三人が叔母に呼ばれたのは、遺産相続の資格を確かめるためらしい。屋敷には黒縁眼鏡をかけた小学生くらいの糞生意気な少年もいた。

 本書のなかではもっともパロディ度が高い。雰囲気やキャラだけではなくトリックも本家をしのばせるのはパロディとしては上質といっていいでしょう。島田荘司だけでなくチェスタトンやらコナンやら楽しい限り。
 

「模倣密室」★★★☆☆
 ――ストーカーの部屋で被害女性が重態、ストーカー自身も頭を打って気絶していた。部屋は密室状態。明らかにストーカーの犯行だった。

 密室といえばお猿さん。まあ父祖ですからねえ。本書のなかでは叙述トリック部分が一番冴えていると思いました。
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