『ミステリマガジン』2008年5月号No.627【さよなら、短篇の名手ホック】★★★☆☆

 エドワード・D・ホック追悼特集
 オットー・ペンズラー、山口雅也法月綸太郎森英俊日暮雅通木村二郎による追悼エッセイ掲載。

「仲間外れのダチョウを盗め」エドワード・D・ホック/木村二郎訳/森ヒカリイラスト(The Theft of the Ostracized Ostrich,Edward D. Hoch,2007)★★★☆☆
 ――〈白の女王〉こと怪盗サンドラの求めで、なぜか仲間外れになっているダチョウを盗む手伝いをする。(編集部あらすじより)

 結果的にシリーズ最終話となった作品。残念ながらアイデアは平凡でパッとしないけど、ニックとサンドラのかけあいが楽しめればいい。
 

「葡萄園のレオポルド警部」エドワード・D・ホック/高橋知子(Leopold in the Vineyard,Edward D. Hoch,2004)★★★☆☆
 ――引退して悠々自適の生活を送るレオポルド(元)警部。しかし義弟マークが助けを求めてくる。マークのワイナリーに着いたレオポルド警部と妻モリーを待っていたのは、夜毎訪れる怪しいヘリコプターと、ワイナリーを買い戻すとしつこい前所有者。そして事件が起きる。(編集部あらすじより)

 たぶんホックは親切から、ある動機についてはあからさまに書いてくれている。それに惑わされなければ、あとは機会の問題である。スマートな出来栄えの犯人当てだと思います。
 

「キルトを縫わないキルター」エドワード・D・ホック/木村次郎(The Faraway Quilters,Edward D. Hoch,2003)★★★☆☆
 ――オカルト探偵サイモン・アークが“ミス・死神”殺しの謎に挑む。(袖惹句より)

 演説の伏線が嬉しい小品。悪魔を求めて無関係のサークルにも興味を持つサイモン・アークが可笑しい。
 

モントリオールの醜聞」エドワード・D・ホック/日暮雅通(A Scandal in Montreal,Edward D. Hoch,2008)★★★☆☆
 ――探偵業を引退し、ハチを飼う悠々自適の生活を送るシャーロック・ホームズ。そんな彼のもとにワトスンが届けた手紙は、かのアイリーン・アドラーからだった。彼女の息子が殺人容疑をかけられたというのだ。ホームズとワトスンは大西洋を渡り、彼女が住むカナダへ向かう。(編集部あらすじより)

 定番のホームズ・パスティーシュアイリーン・アドラーと「欠陥探偵」のスティーヴン・リーコックを登場させた二重のパスティーシュ。ミステリ的には、理が勝ちすぎるダイイング・メッセージくらいかな。

 ホック特集はここまで。
 

貴志祐介の世界」
 おやおや。『新世界より』も面白そうだったのに、『狐火の家』も「論理と切れ味の融合」の短篇集とかで、また違った面白さがありそう。
 

「迷宮解体新書 第5回」中町信
 ミステリマガジンに登場するタイプの作家ではないようなイメージがあったから驚いた。折原一もそうだけど、叙述トリックって本来は読む前に「叙述トリック」と分類した時点でネタバレのはずなんだけれど、もうそれが個性になっちゃってるところがすごいよなあ。
 

「私の本棚 第5回」石川絢士
 異色作家短篇集などのデザイナー。

「私もミステリの味方です 第5回」私立探偵・木村隼人
 

「座談会連載 最終回 『新・世界ミステリ全集』を立ち上げる」北上次郎新保博久池上冬樹・羽田詩津子
 短篇集は別の機会に、だってさ。ちぇっ。でもまあ次の企画が楽しみに。今回はホント、ざっと総括という感じ。最終リストあり。
 

「独楽日記」佐藤亜紀(第5回 「HEROES/ヒーローズ」見たぞ!およびアニメ声問題)

「ミステリ・ヴォイスUK 第5回 刑事コロンボ裏話」松下祥子

「新・ペイパーバックの旅 第26回=ゴールド・メダルの忘れられたヒーローたち」小鷹信光
 

「書評など」
◆「『新・世界ミステリ全集』を立ち上げる」でもいろいろ言われてた『シンプル・プラン』のスコット・スミスの新刊ルインズ 廃墟の奥へ』が出ました。これは内容云々よりも出たことだけで話題になりそうです。ほかに「とんでもない警部がやってきた」「容疑者とレシピ交換!」「殺人現場でつまみ喰い!」という惹句が楽しい(^^;『グルメ探偵キュッパー』など。

「文芸とミステリの狭間」風間賢二
 ヨシップ・ノヴァコヴィッチ『四月馬鹿』。「戦争の狂気と不条理な現実を皮肉なユーモアがあぶりだす」だそうですが、すでにタイトルで何となくその辺の手触りはわかりますね(^^。クロアチアの作家だそうです。

「SFレビュウ」大森望
 とうとう出ましたジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』。「ドナルド・バーセルミとマーティン・ガードナーと筒井康隆を足してπで割ったような作風」だそうです(^^。

◆小山正氏のDVDコーナーではむしろDVDよりも「スウェーデンのジョン・ディクスン・カーヤン・エクストロム『ウナギ罠』が気になったぞ。創元ではヤーン・エクストレムという表記らし。Jan Ekström『Ålkistan』。

ホットリーディング真梨幸子(連作短篇『ふたり狂い』第6回)

ポルトガルの四月』第08回 朝暮三文

『藤村巴里日記』第13回 池井戸潤

「ファイナル・オペラ 6」山田正紀
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