エドワード・D・ホック追悼特集
オットー・ペンズラー、山口雅也、法月綸太郎、森英俊、日暮雅通、木村二郎による追悼エッセイ掲載。
「仲間外れのダチョウを盗め」エドワード・D・ホック/木村二郎訳/森ヒカリイラスト(The Theft of the Ostracized Ostrich,Edward D. Hoch,2007)★★★☆☆
――〈白の女王〉こと怪盗サンドラの求めで、なぜか仲間外れになっているダチョウを盗む手伝いをする。(編集部あらすじより)
結果的にシリーズ最終話となった作品。残念ながらアイデアは平凡でパッとしないけど、ニックとサンドラのかけあいが楽しめればいい。
「葡萄園のレオポルド警部」エドワード・D・ホック/高橋知子訳(Leopold in the Vineyard,Edward D. Hoch,2004)★★★☆☆
――引退して悠々自適の生活を送るレオポルド(元)警部。しかし義弟マークが助けを求めてくる。マークのワイナリーに着いたレオポルド警部と妻モリーを待っていたのは、夜毎訪れる怪しいヘリコプターと、ワイナリーを買い戻すとしつこい前所有者。そして事件が起きる。(編集部あらすじより)
たぶんホックは親切から、ある動機についてはあからさまに書いてくれている。それに惑わされなければ、あとは機会の問題である。スマートな出来栄えの犯人当てだと思います。
「キルトを縫わないキルター」エドワード・D・ホック/木村次郎訳(The Faraway Quilters,Edward D. Hoch,2003)★★★☆☆
――オカルト探偵サイモン・アークが“ミス・死神”殺しの謎に挑む。(袖惹句より)
演説の伏線が嬉しい小品。悪魔を求めて無関係のサークルにも興味を持つサイモン・アークが可笑しい。
「モントリオールの醜聞」エドワード・D・ホック/日暮雅通訳(A Scandal in Montreal,Edward D. Hoch,2008)★★★☆☆
――探偵業を引退し、ハチを飼う悠々自適の生活を送るシャーロック・ホームズ。そんな彼のもとにワトスンが届けた手紙は、かのアイリーン・アドラーからだった。彼女の息子が殺人容疑をかけられたというのだ。ホームズとワトスンは大西洋を渡り、彼女が住むカナダへ向かう。(編集部あらすじより)
定番のホームズ・パスティーシュ。アイリーン・アドラーと「欠陥探偵」のスティーヴン・リーコックを登場させた二重のパスティーシュ。ミステリ的には、理が勝ちすぎるダイイング・メッセージくらいかな。
ホック特集はここまで。
「貴志祐介の世界」
おやおや。『新世界より』も面白そうだったのに、『狐火の家』も「論理と切れ味の融合」の短篇集とかで、また違った面白さがありそう。
「迷宮解体新書 第5回」中町信
ミステリマガジンに登場するタイプの作家ではないようなイメージがあったから驚いた。折原一もそうだけど、叙述トリックって本来は読む前に「叙述トリック」と分類した時点でネタバレのはずなんだけれど、もうそれが個性になっちゃってるところがすごいよなあ。
「私の本棚 第5回」石川絢士
異色作家短篇集などのデザイナー。
「私もミステリの味方です 第5回」私立探偵・木村隼人
「座談会連載 最終回 『新・世界ミステリ全集』を立ち上げる」北上次郎・新保博久・池上冬樹・羽田詩津子
短篇集は別の機会に、だってさ。ちぇっ。でもまあ次の企画が楽しみに。今回はホント、ざっと総括という感じ。最終リストあり。
「独楽日記」佐藤亜紀(第5回 「HEROES/ヒーローズ」見たぞ!およびアニメ声問題)
「ミステリ・ヴォイスUK 第5回 刑事コロンボ裏話」松下祥子
「新・ペイパーバックの旅 第26回=ゴールド・メダルの忘れられたヒーローたち」小鷹信光
「書評など」
◆「『新・世界ミステリ全集』を立ち上げる」でもいろいろ言われてた『シンプル・プラン』のスコット・スミスの新刊『ルインズ 廃墟の奥へ』が出ました。これは内容云々よりも出たことだけで話題になりそうです。ほかに「とんでもない警部がやってきた」「容疑者とレシピ交換!」「殺人現場でつまみ喰い!」という惹句が楽しい(^^;『グルメ探偵キュッパー』など。
◆「文芸とミステリの狭間」風間賢二
ヨシップ・ノヴァコヴィッチ『四月馬鹿』。「戦争の狂気と不条理な現実を皮肉なユーモアがあぶりだす」だそうですが、すでにタイトルで何となくその辺の手触りはわかりますね(^^。クロアチアの作家だそうです。
◆「SFレビュウ」大森望
とうとう出ましたジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』。「ドナルド・バーセルミとマーティン・ガードナーと筒井康隆を足してπで割ったような作風」だそうです(^^。
◆小山正氏のDVDコーナーではむしろDVDよりも「スウェーデンのジョン・ディクスン・カー」ヤン・エクストロム『ウナギ罠』が気になったぞ。創元ではヤーン・エクストレムという表記らし。Jan Ekström『Ålkistan』。
「ホットリーディング」真梨幸子(連作短篇『ふたり狂い』第6回)
『ポルトガルの四月』第08回 朝暮三文
『藤村巴里日記』第13回 池井戸潤
「ファイナル・オペラ 6」山田正紀
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