『ゴーレム100』アルフレッド・ベスター/渡辺佐智江訳(国書刊行会〈未来の文学〉)★★★★★

 どんな難解な書物なのかと臆していたのだけれど、読む分には気負う必要はないです。訳者や出版社は大変だったろうけれど、読むだけなら気軽に(?)読めます。そりゃ読むだけにしたって、すべての引用や仕掛けを完全に理解しようとすればとんでもない知識と頭脳労働を強いられるだろうけれど、まあわかるところだけ笑ったり感心したりすればいいと思います。

 あらすじ自体は実は意外と単純で、未来のニューヨークで有閑レディたちが悪魔を召喚したために起こった奇怪な連続殺人を、警官と化学者と精神科医が追うという話。

 犯人=悪魔の正体も、割りと早い段階で明らかになります。

 だったらこのぶ厚い書物の大半には何が書かれているのかというと、捜査と証拠固めということになるのかなあ。。。ゴーレム=イドの集合体であるという仮説を現実レベルで理解&解決するために、発生源を突き止めたりゴーレム界に臨戦実験したり、なんやかや。

 と、いうか。

 普通は戦えませんよね。こんな相手とは。戦っちゃうんですよ。しかも飛びっきりエンターテインメントしてるんですよ。形而上学的内宇宙的な四角四面で無味乾燥な内省ではなく、実体のあるモンスターとアクションしているような熱い迫力。実体のある犯人を追っているかのようなじりじりするサスペンス。

 山形浩生氏も解説で仰ってますけど、単なるグラフィック的な遊びかと思ってたイラストの意味がわかったときは、ほんと愕然としました。

 おまけに無人島に一冊持っている本の候補にできるくらいに、精読にも耐えうる内容。これはもうベスト中のベストでしょう。

 『GOLEM100』Alfred Bester,1980年。

 22世紀のある巨大都市で、突如理解不能の残虐な連続殺人事件が発生した。犯人は、ゴーレム100、8人の上品な蜜蜂レディたちが退屈まぎれに執り行った儀式で召喚した謎の悪魔である。事件の鍵を握るのは才気あふれる有能な科学者ブレイズ・シマ、事件を追うのは美貌の精神工学者グレッチェン・ナン、そして敏腕警察官インドゥニ。ゴーレム100をめぐり、3人は集合的無意識の核とそのまた向こうを抜け、目眩く激越なる現実世界とサブリミナルな世界に突入、自らの魂と人類の生存をかけて闘いを挑む。しかしゴーレム100は進化しつづける……/『虎よ、虎よ!』の巨匠ベスターの最強にして最狂の幻の長篇にして、ありとあらゆる言語とグラフィックを駆使して狂気の世界を構築する超問題作がついに登場!(カバー袖あらすじより)
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