作中作ならぬ語りの中の語りで語られる、語り手の物語。
訳者もあとがきで引用しているけれど、「それもまた一つの話だ。自分を物語のように話せば、それもそんなに悪いことじゃなくなる」というわけで、お伽噺みたいな語り口とエピソードで綴られます。
「母さんはわたしをシルバーと名づけた。わたしの体は銀と海賊でできている。」という冒頭(小見出し?)。こういう書きっぷり自体は最近の女流作家の作品には珍しくない。正直、またか――と思ってしまったことも事実である。
ピューの言葉をはじめとして、警句みたいな名文句も頻出する。
そういう意味では確かにいかにもな現代文学なんだけれど、例えばバドニッツと比べると「わたし」の物語な感じが強いというか、ガーリッシュというか、これだけお伽噺性が強いくせして不思議なほど現実寄りな印象を受ける作品でした。
『Lighthousekeeping』Jeanette Winterson,2004年。
みなし児の少女シルバーは、盲目の灯台守ピューに引きとられ、夜ごと、百年前に生きた牧師ダークの「数奇な人生の物語」に耳を傾ける。シルバーとダーク、やがて二つの「魂の遍歴の物語」が交差していく……。(帯あらすじより)
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