サローヤンは三浦朱門のとんでも訳ととんでも解説で読んだだけなので、かなりイメージが悪い作家だった。今回改めて読んでみたけれど、やはりあまり好きではない。
「わが心高原に」(My Heart's in the Highlands,William Saroyan,1939)★☆☆☆☆
――貧しい父子の前にふらりと現われた謎の老人。シェイクスピア俳優を名乗り、美しい音色でラッパを吹く彼と父子は、奇妙な絆を築いていく。町の人たちも、彼の不思議な魅力につかの間苦労を忘れるが……。(カバー裏あらすじより)
初演時によっぽど何か言われたんだろうけれど、長々としたまえがきで、子供をダシに使っているのが腹が立つ。こんな教科書的なお利口さんのクソガキを書いておいてよく言うよ。三浦訳『我が名はアラム』でも感じたけれど、この人の書く子どもはこまっしゃくれていて虫酸が走る。
「おーい、救けてくれ!」(Hello Out There,William Saroyan,1941)★★★☆☆
――社会の底辺に暮らす青年と、さげすまれて生きてきた娘の幻のような恋を描いた(カバー裏あらすじより)
これを恋だと信じ込んで書けるところが、「人生をまるごと肯定」「優しい眼差し」たる所以なんだろうけれど、現実的ではないよね。理想主義なのは「わが心高原に」も一緒。恋に恋するロマンティックな気分に浸れる、センチメンタルな作品。