『ミステリマガジン』2009年2月号No.636【特集 デニス・ルヘイン】

「迷宮解体新書(14)米澤穂信」村上貴史
 新刊『儚い羊たちの祝宴』紹介がメインなのですが、「装幀も相当に凝っている」「泡坂妻夫の「椛山訪雪図」」「制約(ブッキッシュと奇想、フィニッシングストロークホワイダニット」など、気になる言葉がぽんぽん飛び出して来ます。
 

デニス・ルヘイン特集

「ルヘインQ&A」など

「ICU」デニス・ルヘイン/加賀山卓朗訳ICU,Dennis Lehane,2004)
 ――追われる男が、病院の集中治療部門で見た人生の側面とは――。(袖惹句より)

 漂う緊張感と、緊張感をいっそう高めるおしゃれさんたち。たぶん現実はもっと汚い。敵も味方も通りすがりもみんなかっこいい人たちばかりなんてことはあり得ない。そんなあり得ないくらいの会話や間のつなわたりが、とんでもない緊張感を生み出してます。

「マッシュルーム」「失われしものの名」デニス・ルヘイン
 

「追悼ジェイムズ・クラムリー小鷹信光池上冬樹木村二郎直井明法月綸太郎
 一昔まえならあるいはこっちの方がメイン特集だっただろうに……というか、あの髭面の写真しか知らなかったのでびっくりしました。
 

「機械探偵クリク・ロボット 五つの館の謎(前編)」カミ/高野優訳(Krik-Robot, Détective-à-moteur L'Énigme des 5 pavillons,Cami,1945)
 ――庭に一発の銃声が鳴り響き……額にナイフの突き刺さった男が地面に倒れた。

 ついに邦訳。『名探偵オルメス』のカミが生んだロボット探偵です。ぶっとぶようなナンセンスではないけれど、いちいち面白い。たとえば↑上に引用した冒頭部分も、実は二つの文のあいだにカミ自身によるイラストが挟まって文章が分断されているんです。その無駄になが〜い間がいい味だしてました。
 

「翻訳ミステリ応援団!(第1回)」北上次郎×田口俊樹×書店員
 また意味のわからない企画が始まったよ。。。業界内の話は業界内だけでやってもらいたいものです。それとも『ミステリマガジン』の読者はほとんどがミステリ関係者なのだろうか。でもまあ業界内幕ものだと思えば……ワイドショー的な面白がり方ができる……のかな。。。
 

「フォリ・ア・ドゥ」(“ふたり狂い”最終回)真梨幸子

「書評など」
◆DVDからは『天使の宿り木』。このタイトルだし恋愛映画だというからつい見逃しがちですが、制作が『アメリ』『デリカテッセン』のクローディー・オサール、監督と脚本が『歓楽通り』のセルジュ・フリードマン、等々……。

◆以前(→『MM』07年05月号)に洋書欄で紹介されてたデュアン・スウィアークジンスキ『The Blonde』が、デュエイン・スウィアジンスキー『メアリー - ケイト』のタイトルで翻訳されたみたいです。力業な発想が楽しそうな作品ですが、タイトルの真ん中が「中黒」ではなく「ハイフン」なのも気になります。

◆ほかに気になるのは『ポジオリ教授の冒険』、連城三紀彦造花の蜜』、『〈盗作〉の文学史など。

◆風間・大森両氏はそれぞれスザンナ・クラーク『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』、〈奇想コレクション〉イーガン『TAP』。「大人のためのハリー・ポッター」という惹句にこのタイトル(原題通り)ではまったく食指が動かないところだけど、実はハードな作品なのだそうです。一方イーガン『TAP』はあまりハードSF度の高くないものを選んだからとっつきやすいんじゃないかということですが、イーガンの取っつきにくさはSF面じゃなくて心理面にあるとわたしは思う。

関口苑生氏はシムノン『闇のオディッセー』を紹介。なぜだか河出書房はシムノンに力を入れてくれる。ありがたいありがたい。
 

「日本映画のミステリライターズ(第30回)「市川組」(3)と新『犬神家の一族』」石上三登志
 なぜ渥美清主演の珍作『八つ墓村』ができたのか? なるほどそういうわけだったんですか。いやでもだからといって、そのまんま寅さんはないだろ……と思いましたが。
 

「独楽日記(第14回)宮下誠氏とルマルシャンの箱」佐藤亜紀
 『ヘルレイザー』まで持ち出して、はじめ何の話だと思ったら、ああそうか、と腑に落ちる。

「新・ペイパーバックの旅 第35回=七つの棚を占拠した四人のアーティスト」小鷹信光

「誰が少年探偵団を殺そうと。」06 千野帽子柴崎友香『青空感傷ツアー』ふたたび。」

「夢幻紳士 回帰篇(第六話)夢魔高橋葉介
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