『Black Magic』Marjorie Bowen,1909年。

 マージョリー・ボウエンは短篇三つ四つくらいしか読んでいなかったので、てっきりジェントルな女流怪談作家かと思っていました。

 ところが何の気なしにネット上で拾って読んでみた長篇は、何とその名の通り『黒魔術』でした。『黒魔術』とはいってもそんなどろどろしたもんじゃないだろ、と思ってたんです。短篇の印象からは。

 ところがどっこい、嘘偽りなく黒魔術、いきなり呪文で何か呼び出してしまいます。これにはびっくりしました。のけぞりました。正直ショックでした。マージョリー・ボウエンにこんなの期待してないのに。。。

 いやでも、何しろ冒頭がかっこいいんです。「Flandersの閑静な町にある家の一室で、一人の男が一体の悪魔を鍍金していた」。なんぼのもんじゃいと思うような文章ですが、この男Dirkは彫刻家なのです。

 現れた訪問者は、名目上の妻を探しに来た貴族とその連れ。妻は修道院から逃れ、Dirkの師匠宅で亡くなったのだった。庭に作った墓を見せて、その日はもてなして翌日お別れ、かと思いきや、連れが見つけたのはDirkが持っていた黒魔術の本。彼も黒魔術には興味があったのだ。

 かくして二人は旅に出て――。

神学生に追われたり、謎の女性に出会ったり、「魔女」を訪問したりと、長篇だけにいろいろ起こって面白い。


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