『ヒッチコック劇場』第一集2(ユニバーサル)★★★★☆

「もうあと1マイル」(One More Mile to Go)
 ――ある日、怒りにまかせて妻を殺してしまったサム。近くの湖に死体を捨てるべく、麻袋に詰めた死体をトランクに積んで、サムは車を走らせる。ところが……(ジャケット裏あらすじより)

 第67話。ジェイムズ・P・キャヴァナー脚本。F・J・スミス原作。デイヴィッド・ウェイン主演。

 三十分たらずの内容なのに、初めの十分近くが無言劇。かっとなって殺してしまって、電話しようと手を伸ばしたところで袖口についた血に気づいて思いとどまったり、車のトランクを開けたあとで脇の麻袋に気づいて死体を包んでさらに重し代わりに鎖を巻いたり……と、だんだん逃れられない方向に進んでいく様子が手に取るようにわかって目が離せません。あとはもうお決まりの――いわばキングの駒を実際に取るところまでではなく、チェックメイトの段階で幕を引く演出がおしゃれです。
 

「賭」Dip in the Pool
 ――ヨーロッパへの船旅へ出たボネヴィル夫妻。船中で出会ったレンショー氏から、夫は船内で行われている賭博場の話を聞く。それは、翌日の航海距離を賭けるものだった。嵐が迫っていると聞いた彼は、短距離の航行に賭けるのだが……(ジャケット裏あらすじより)

 第113話。ロアルド・ダール脚本。キーナン・ウィン主演。

 単なる司会ではなくヒッチコックの解説も作品のうち。これなどはその傾向がかなり強い作品です。目と耳はしっかりしていたけれど頭が……という皮肉なオチ(というかギャグ)がさらに笑えるものになっています。
 

「神よ許し給え」(The Horseplayer)
 ――雨漏りさえ直せないほど貧しい教会に、ミサで必ず多額の寄付をする男が現れる。その男・シェリダンは“祈ってみよう”という看板に誘われ、教会で祈り始めたところ、競馬で大当たりするようになったため、感謝のしるしとして献金していると言う。賭け事のために祈る男を戒める神父だが、献金が大変ありがたいのもまた事実だった。そんなある日、神父は街でシェリダンと出会う。彼はなんと、必ず勝つ馬がいると神父に告げるのだが……。(ジャケット裏あらすじより)

 第213話。ヘンリー・スレッサー脚本・原作。クロード・レインズ主演。熊倉一雄他の吹替音声も収録。

 堅気ではないのに根は素朴なシェリダン(エド・ガードナー)の人物造形というのは、現代では(日本では?)なかなか見られない人物像で、そこがまず新鮮でした。教会(神)というのが一つの絶対的な権威として広く認められているんですね。結局のところ、裏返せば「神様は願い事を叶えてくれる」とも取れないこともないのが面白い。

 教会の助手(パーシー・ヘルトン)が献金をアピールするのが可笑しくてしょうがありませんでした。
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