『東大の教室で『赤毛のアン』を読む 英文学を遊ぶ9章』山本士郎(東京大学出版会)★★★☆☆

 東大の講義をもとに、テクストを精読する、という小説を読むうえでの基本的な作業をまとめたものです。佐藤亜紀『小説のストラテジー』や若島正『ロリータ!ロリータ!ロリータ!』にも書かれていたようなことを、入門書のような形で書いたものと言えるでしょう。併せて、イギリスの文化、英文学に現れるいろいろなタイプ、も紹介されるので、それも英文学を読む助けになります。

 まずは「ロミオは実在の人間ではない」としるされます。実はロミオはこう思っていたんじゃないか、きっとああしたかったんじゃないだろうか――作品のどこにもそう考える根拠がないのに、作品を無視して実際に生きている人間であるかのようにみなしてあれこれ想像するのは間違いだ、と、基本中の基本宣言からスタートです。

 そのうえで、なぜ主人公が「押し入り」と呼ばれるのか、なぜ村岡花子訳『赤毛のアン』から「マリラの告白」がカットされているのか、なぜ『ジェイン・エア』は最後になってオカルト小説みたいになるのか……

 内容そのものはとてもいい本なのですが、講義をもとにした(講義風のところを残した)形式で書かれているのが、著しくマイナスでした。

 「とんちんかんな反応をしているってわけなんですね」「あったりー!」

 「うわあ!(中略)作家ってすごいな!」

 いくら入門書とはいえ、対象年齢が幼稚園児じゃないんだから。。。
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