『ミステリマガジン』2010年5月号No.651【ロバート・B・パーカーに献杯】

 半分近くのページがロバート・B・パーカー特集。かなり力を入れているのか、未訳作品が多かったのか。わたしは興味がないので今回はパス。そうしたらほとんど読むものがなくなってしまった。
 

「独楽日記(第29回)想像力にできること」佐藤亜紀
 佐藤亜紀は最近ちょっと低調です。優等生的でものたりない。
 

「誰が少年探偵団を殺そうと。」21 千野帽子「「わかってる・わかってない」の話、一度でもした奴、二歩前に出ろ。」
 また脱線してる。何かあったのかな。ほかのところの怒りを事情を説明しないまま持ち込まないでほしいんだけどなあ。
 

「書評など」
『ミステリの女王の冒険』は、ドラマ『エラリー・クイーン』の脚本集。わたしなんかは「『刑事コロンボ』のコンビが作った」(製作総指揮)というところに反応して購入したのだけれど、書評文中ではそのことには一切触れられず。『ミステリマガジン』の読者はそんな煽りで気を引かなくとも「エラリー・クイーン」の文字だけでアピールするくらいの猛者ばかり、という前提なのだろうか。。。白水社〈エクス・リブリス〉シリーズから、デニス・ジョンソンジーザス・サン』『煙の環』が、ミステリとして紹介されてます。これも〈エクス・リブリス〉という叢書の一冊なのだという事実には触れられず。千野評論を読んだあとだと、何だか自分が村から排除されてるような疎外感を感じるな。。。

◆うわっ、P・D・ジェイムズって今年で90歳なのか。それで二年前に新作『秘密』を書いてるのかあ。凄いな。

◆どうしたって気になるのがピエール・フライ『占領都市ベルリン、生贄たちも夢を見る』。どう見てもバカミスかB級ホラーのような書影なのだけれど、紹介文を見てもそんなことは書かれてないし、むしろ「重厚長大」だそうです。事情はよくわかりませんが気になるのは確かなので、アイキャッチーとしては成功しているというべきでしょうか。

東京創元社の新人・梓崎優『叫びと祈り』は「〈ポジオリ教授〉シリーズや古泉迦十の『火蛾』をも連想させる」というなかなか素敵な一文が。『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』は、東編集長が猛プッシュしていたので読んでみたのですが、実話臭くない語り口(というか完全なフィクションも)が実話怪談ぎらいのわたしの口にも合いました。福井健太氏はその文章を「品のよさ」「端正な幽玄ぶり」と表現してますね。

『T・S・スピヴェット君 傑作集』ライフ・ラーセンは、紹介文だけ読むと面白そうなのですが、実際パラパラと見てみると「ふうん……」という感じなんですよね。。。

『リックの量子世界』デイヴィッド・アンブローズは、訳者が渡辺庸子氏なのでちょっと迷っていたのだけれど、キワモノっぽいな。。。

小野俊太郎フランケンシュタイン・コンプレックス』、フェリシア・ミラー・フランク『機械仕掛けの歌姫』は、どちらも人造人間がらみの評論。前者の「怪物が実は近代的自我の投影」という内容はあまりにも陳腐だけれど、『チャタレイ夫人』の「車椅子の夫の姿に、田園を駆けめぐる機械文明の象徴を読み取る」というのが、いったいどういうことなのか気になります。夢野久作『猟奇歌』はタイトルから『ドグラ・マグラ』の絵本かビジュアル本か何かかと思ったら、そのものずばり夢野の「短歌」集でした。

◆DVD『極楽島殺人事件』は、韓国の本格ミステリ映画だそうです。わたしは「韓国映画ならではのハイテンション」というのが苦手で、何を観てもギャグに見えてしまうんだよなあ。
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