『アンリ三世とその宮廷』、戯曲(散文)。
時は三アンリの時代。カトリーヌ・ド・メディシスが占星術師ルジェーリのもとを訪れていた。アンリ三世に対する自らの影響力を持ち続けるためには、王の寵臣サン=メグランとカトリック同盟ギーズ公が邪魔だったのだ。そこでルジェーリは、ギーズ公の妻がサン=メグランと惹かれ合っていることを明らかにする。
今もギーズ公妃を薬で眠らせ隠し部屋に寝かせてあるのだ。その夜はサン=メグランと友人たちが占いをしにやって来る予定だった。やって来たサン=メグランは隠し部屋のなかのギーズ公妃を見て、ルジェーリの魔術によって自分の思いが幻の形を取ったのだと思い、自らの愛情を確信する。
計画を遂げたルジェーリはギーズ公妃を家に帰すが、そのとき公妃はハンカチを置き忘れてしまう。ルジェーリ家を訪れたギーズ公アンリがそれを見つけ、ひそかに復讐を誓う。
アンリ三世のもとで一堂に会する。ギーズ公はカトリック同盟の地盤を固めるつもりだったが、王の機転でそれは阻止され、サン=メグランと決闘することになる。国王アンリ三世はサン=メグランにお守りを渡す。
ギーズ公は妻を拷問し、サン=メグランをおびき寄せる手紙を書かせる。愛が実ったと喜び勇んでギーズ邸にやって来るサン=メグラン。策略に嵌り一室に閉じ込められたギーズ公妃とサン=メグラン……。
……と盛り上がったところだというのに、クライマックスの決闘は、なんと窓からの実況中継。窓から逃げ出した(!)サン=メグランを追ったギーズ公の部下が、室内のギーズ公と、城外の様子を台詞でやりとりするというのは、実際の上演ではどうだったんでしょう、盛り上がったんでしょうか。。。? 舞台では決闘シーンは難しいのか。あるいは決闘シーンなんかあったらそっちに華を奪われる、と主演女優あたりが文句をつけたのかな?
『モンソローの奥方』のモンソロー伯爵とビュッシー・ダンボワーズの決闘のような華々しいクライマックスを期待していたので、サン=メグランが逃げ出すというのはかなり拍子抜けしてしまいましたが、一応これは名誉よりも生きて愛を取る(結局死んでしまうのですが)ということになっています。
アンリ三世が手渡したお守りや、ギーズ公妃が置き忘れたハンカチが、最後になって効いてくるなど、小道具の使い方もけっこう手練れです。