『狼は天使の匂い』デイヴィッド・グーディス/真崎義博訳(ポケミス1735)★★★★☆

 『Black Friday』David Goodis,1954年。

 古き良きダークなノワール小説。喧嘩には強い、女に惹かれる翳がある、ボスに気に入られる骨もある、でも「プロ」の殺しはできない半人前。むかしの舘ひろしとかが出てきそうな血のしょっぱさ。

 かっこよくいえば娑婆にとっても裏社会にとってもアウトロー。ということは早い話が駄目人間なんですが、何ていうか、俺はこんなにかっこいいのに運命は見放したぜ!みたいなナルシシスティックな滅びの美学が最高です。

 「俺はお前を認めねえ」な喧嘩っ早い力自慢、少し距離を置く抑え役、色気だけでできているような美女、怯える女使用人、等々、役者もそろって渋い。

 警察の手を逃れ、故郷のニューオーリンズからフィラデルフィアへと逃亡してきた青年ハートは、あまりの寒さに耐えかね、一着のオーヴァーコートを盗んだ。それが、ことの始まりだったのかもしれない。逃げ込んだ路地で彼が目にしたのは、銃弾を受けた瀕死の男だった。男を撃った連中に捕まり、彼らの隠れ家へ同行したハートは、いつしかプロの犯罪者たちが立案した強盗計画に加わり、決行の日を待つことに。だが一味の女と関係を持ったときから、運命はあらぬ方向へと転がり始めた! ルネ・クレマン監督が映画化した、ノワール小説の伝説的名作。(裏表紙あらすじより)

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