『第三の魔弾』レオ・ペルッツ/前川道介訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚)
『Die Dritte Kugel』Leo Perutz,1915年。
レオ・ペルッツの第一長篇。ということで、その後の作品に見られるような、予言と逃れられぬ運命といったパターンがすでに現れていました。
小説のなかでわざわざ描かれた呪いですから、成就するに決まっているとはいえ、それがどう成就するのか、がないがしろにされては興醒めです。
その点、肉を切らせて骨を断つ(?)的な第一の魔弾には、運命の悲劇というに相応しい残酷さが詰まっていました。第二の魔弾を単なる誤射で済ませておいて、そこからは結末に向かって一直線――アクロバティックと言うべきかちょっとずるいと言うべきか、第三の魔弾は意外な形でやって来ました。なるほど無駄に額縁型の物語だったわけではないのですね。
呪いが口にされるのが中盤です。前半は幻想味はうすく、新大陸を舞台にした猥雑な歴史小説の趣があります。
すぐに騙される悪魔がお茶目です。
神聖ローマ帝国を追放され、新大陸に渡った“ラインの暴れ伯爵”グルムバッハは、アステカ国王に味方して、征服者コルテス率いるスペインの無敵軍に立ち向かった。グルムバッハは悪魔の力を借りて敵の狙撃兵ノバロの百発百中の銃を手に入れるが、その責を問われ絞首台に上ったノバロは、死に際に銃弾に呪いをかけた。「一発目はお前の異教の国王に。二発目は地獄の女に。そして三発目は――」騙し絵のように変幻する物語、幻想歴史小説の名作。(カバーあらすじ)
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