『月刊アフタヌーン』2010年9月・10月号

 『おおきく振りかぶって』『百舌谷さん逆上する』『無限の住人』『からん』『ハトのおよめさん』などの連載のほかに。

「25時のバカンス(前・後編)」市川春子
 ――天才海洋科学者の西乙女はめずらしいものに惹かれる人間で、何にでも点数をつける癖があった。片目を失くした弟はカメラマン。閉鎖寸前のいそがしい研究所の仕事を抜けてまで乙女が弟と久しぶりに会ったのには、ある事情があった。乙女はみずからを新種の深海生物の宿主にして共生生活を続けていたのだ……。

 市川春子の前後編読み切り掲載。ポーカーフェイスの変人たちによるドタバタはもはや市川節と呼んでもいいような気配、そんな韜晦の裏に隠された、なんて遠大なる計画。
 

「ドロップワイズ」杉乃紘 ――サンプルと研究成果とともに姿を消した研究者・樹崎。調査員の谷地が見つけ出した樹崎は、「娘」と暮らしていた。

 新人さんの二作目か三作目(?)。内容はわりとありがちですが、大きな目と瞳がときどきオノ・ナツメっぽい絵柄のおかげで、実はシリアスな作風と適度な距離感を保たれています。
 

四季賞』別冊小冊子

「ヤングイコン」篠宮ツキ
 ――画材にもこだわる絵描き葉山京介は、その才能を見込まれて、中国の画商から大量制作をもちかけられる。こだわりを捨てて成功を取るべきか


 四季大賞受賞作。絵といい内容といい、熱い。暑苦しい。古臭さすら感じさせるほどの熱さ。ケータイは描かれているものの、とても現代とは思えません。『スクールウォーズ』?とか、そういうのと同じ熱さです。
 

「宇宙の恋人」藤嶋マル
 ――営業の宇野さんはかなり変わった人だった。年中黒いスーツを着て、宇宙人だと自称している。小舞子はそんな宇野さんにデートに誘われた。


 四季賞受賞作。恋愛コメディ。磯谷さんという先輩肌の先輩がしっかり物語をコントロールしていて、むしろこの人が一番目立っていました。
 

「ライカイカ -LIKE A LAIKA-」山崎廉
 ――松本は宇宙船の乗務員。船長のクジラにラフなかっこうを注意されました。


 谷口ジロー特別賞受賞。ショート・コミック三本。日常ではない空間を舞台に、こうした日常エッセイふうの作品を描くには、よほど構成がしっかりしているに違いないのだと思う。「ヤングイコン」の人がトーンをほとんど使わずに描き込んで画面を意図的に(?)うるさくしている一方、本篇は同じように描き込んでいてもまったくうるさくないのが対照的でした。
 

  


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