『バッド・モンキーズ』マット・ラフ/横山啓明訳(文藝春秋)★★★★☆

 『Bad Monkeys』Matt Ruff,2007年。

 ペイパーバック装幀が内容ともぴったりな、チープで濃ゆい、悪酔いしそうな犯罪小説。

 高校時代にひょんなことからシリアル・キラーの正体を知ってしまい、一人証拠をつかもうと……というところまではまだしも普通のサスペンスだったのですが……。

 ジェインが語るメイン・ストーリーとは別に、「ホワイトルーム」と題された外枠があることからも、なんだか信用できない話だぞ、というのはあからさまにわかるのだけれど、途中から内容がマトリックスみたいなことになりはじめて、さすがにこれはないだろ、と思っていたら、最後にはちゃんと着地してくれたことに脱帽です。

 最後にちゃんとたたんでくれるのなら、いくらでも風呂敷は広げてもらった方が面白いに決まってます。

 悪と戦う秘密組織だとか、おもちゃみたいな光線銃だとか、怪しさ満点すぎ。

 それでいて一見ふざけているようなキッチュさとは裏腹に、少しずつ嘘がはがれていくにしたがい明らかになってくる構成の緻密さにもうならされました。

 “あたしは悪を殲滅する組織の一員なのさ”殺人で逮捕された女ジェインは、精神科医にそう告げた。鮮やかなオレンジ色の銃で悪を葬る――それが自分の任務だと。標的=幼児連続殺人犯、連続男娼殺し、爆弾魔……ジェインの口から語られる悪との壮絶な対決。だが、彼女の告白は「真実」なのか? すべてを監視する「眼」、雑誌に隠された暗号、斧を持つピエロ……都市伝説の不安にアメリカン・コミックのクールネスを搭載、奇術師の周到さで仕立てた、超鋭利な一気読みハイパーアクション! 最終章のめくるめく反転に瞠目せよ。(裏表紙あらすじより)
 --------------

  『バッド・モンキーズ
  オンライン書店bk1で詳細を見る。
 amazon.co.jp amazon.co.jp で詳細を見る。


防犯カメラ