『パララバ』の著者による第二作。SFだった前作同様、今回もSF風に幕を開けます。
有亜のもとにかかってきた一本の電話――。「僕は五年後の世界からかけてるんだ。僕は……もうすぐ君の彼氏になる男。だけど僕はそれを止めたくて。僕たちはいつか人を殺し、そして君は死んでしまう。僕はその未来を防ぎたいんだ」
それは久則たちが悪ふざけで適当にかけた悪戯電話のはずだった。ところが数日後、久則は有亜とばったり出会い、一目で恋に落ちてしまう。
悪戯電話の主であることは伏せて、有亜とつきあい始めた久則。交際は順調かと思われたが――。
やがて久則が電話で「予言」した出来事が実際に起こり始め……。有亜、久則、そして従兄弟の正臣の三人は、真相を探り予言を防ぐべく、調査と推理を開始する。有亜を見たという目撃証言。だが有亜にはそんなことをした記憶がない……。いったい何が起こっているのか――?
シャーロック・ホームズとジャッキー・チェンにはまっていたというだけあって、よくできたミステリ仕立てです。
五つの「予言」が一つずつ、しかも徐々にエスカレートしていくわけですが、この予言が四色の色にまつわる予言+一つというところでもう琴線に触れてしまいました(^_^;。『虚無への供物』とか連想しちゃうではないですか。
変人チックな探偵役に、猪突猛進型(バカというわけではない)のワトソン役というのはお約束ですが、これが並みの猪突猛進ではありません。脊髄だけで動いてます……。予言を防ぐため赤をなくそうと考えたのに、クリスマスの買い物に浮かれて真っ赤なサンタを買いそうになったり。身体が正しいことや楽しいことに反応してしまう、気持のいいやつです。
タイトルになっている「ボク」と「奇跡」が思わぬところで出てきて驚きました。静月氏、実はけっこう意地のワルイ人なのかも……?
ラノベ作家にもうちょっと世代越えを狙ってもらった新レーベルらしいです。この人の作品は、『パララバ』も探偵役を除けばもともとライトノベルとしては大丈夫なのかな、って思うほど地味な学園ラブコメ風で、だからまったく違和感はないです。
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