『ちくま文学の森3 幼かりし日々』

「頑是ない歌」中原中也 ★★★★☆
 ――思へば遠く来たもんだ/十二の冬のあの夕べ/港の空に鳴り響いた/汽笛の湯気は今いづこ

 「なんだか自信が持てないよ」がかわいいんですが(^_^; 自信のない様子がうまく表現されているといえばいえます。
 

多摩川探検隊」辻まこと ★★★☆☆
 ――多摩川の源はどこでどんなになっているのか? 付図と私の権威を守るために、多摩川は私によって実証されなければならない運命と相成った。探検隊は五人になって編成された。いよいよ出発の朝になったら、現れたのは所君という靴屋の息子と私だけだった。

 ひとりで粋がってるアホガキぶりをユーモアたっぷりに思い返した文章。子どものころは誰もがみんなこういうクソガキだったのですよ。
 

幼年時代の思い出」アンリ・ファーブル/林達夫山田吉彦(Souvenirs entomologiques,Jean-Henri Fabre)
 

風の又三郎宮沢賢治 ★★★★★
 ――どっどど どどうど どどうど どどう/青いくるみも吹きとばせ/すっぱいかりんも吹きとばせ/どっどど どどうど どどうど どどう――谷川の岸に小さな学校がありました……。

 賢治作品のなかで一番好きな作品。というか唯一好きな作品。転校生を謎の存在として描くという単純にして的確な表現を用いることで、ほかの賢治作品にはない普遍性を勝ち得た傑作です。
 

「うけとり」木山捷平 ★★★☆☆
 ――貧しい百姓の子供たちは、学校がひけて家へ帰っても、勝手気儘に遊ぶことはできなかった。彼等はどこの家でもうけとり(ある仕事の量を決めてそれをひき受けさせること)を命じられ強要された。野良に出て追い使われることに比べれば、うけとりくらいは苦労の中にはいらない、と岩助は思った。それに学校をさがって「セイちゃんに遭えなくなったら……」

 子どものころはなぜか付き合ってる人たちは馬鹿にされる……というのは昔から変わらないらしい。ギャグ漫画並みの豹変先生にバカウケしてしまいました。
 

「出生から十三歳まで」勝小吉
 

「幼少の時」福沢諭吉
 

「最初の思出」大杉栄
 

「お月さまいくつ」山川菊栄
 

「父」金子ふみ子

 自伝のなかでは大杉栄のがいちばん面白かった。
 

「少女」キャサリンマンスフィールド/崎山正毅訳(The Little Girl,Katherine Mansfield)★★★★★
 ――その女の子は、父の姿が何となく恐しくて、いつもさけるようにしていた。女の子は、他の人と話す時には決してどもらないのだ――ただ父の前に出ると、まちがわないようにと思って一所懸命になるので、かえってどもってしょうがないのだ。

 厳格な父に怯える少女がふとした瞬間に覚える父の愛情。
 

「風琴と魚の町」林芙美子
 

「鮨」岡本かの子

 これは既読。
 

「龍潭譚」泉鏡花 ★★★★☆
 ――人顔のさだかならぬ時、暗き隅に行くべからず、怪しきもの居て、人を惑わすと、姉上の教えしことあり。「おいおい」といいたるはわが家につかいたる下男の声に似たるに、あわや出でむとせしが、恐しきもののたばかりて、おびき出すにやあらむと恐しさはひとしお増しぬ。

 いつものごとく幻覚を見る話、ではあるのですが、幼い子どもが主人公になっていて、孤独な子どもの空想のような内容でした。それにしては悪夢的で妖艶なところもあるのですが。
 

「少年の悲哀」国木田独歩
 

「クリスマスの思い出」カポーティ/瀧口直太郎訳

 これは既読。
 

クジャクヤママユ」ヘッセ/岡田章雄訳(Das Nachtpfauenauge,Hermann Hesse)

 教科書に載ってた「少年の日の思い出」初稿版。
 

「にんじん抄」ルナール/岸田国士(Poil de Carotte,Jules Renard)
 

「インディアン・キャンプ」ヘミングウェイ北村太郎(Indian Camp,Ernest Hemingway)
 

梨花」吉野せい
 

「注射」森茉莉
 

小さき者へ有島武郎
 

「故郷」魯迅竹内好

  


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