『アバンチュリエ(2)』森田崇(講談社イブニングKC)★★★★★

 新訳ルパン・シリーズの第二巻が発売。「王妃の首飾り」の続きと「謎の旅行者」、「ハートの7」の途中までが収録されています。

 読む前から誰もが真相を知っている作品といえば『アクロイド殺害事件』や「モルグ街の殺人」あたりが有名ですが、個人的には「王妃の首飾り」や「アンベール夫人の金庫」を何の予備知識もなく読みたかったと思っています。偕成社版や新潮文庫版はあらすじでネタバレしてるんですよね(ルパン○○の事件、とかルパンの○○、とか。そういう煽りを入れたくなる気持もわかりますが……)。

 そういう点で本書の「王妃の首飾り」の場合は著者も版元も勘所をしっかり心得ていて、ルパンのキャラクターだけではなくミステリ部分もないがしろにしていません。本書で初めて「王妃の首飾り」を読む人がうらやましい。

 最後のコマでさりげなくフルネームが描かれているのがおしゃれでした。ヴィクトワールが「お嬢様」と呼んでいて、考えてみればルパンの「乳母」ということは、そうかそういうことになるのかな?

「謎の旅行者」は、原作を読んだときはルパンの立ち位置が面白かった作品なのですが、本書では最新式の自動車による追跡を見どころに据えているところが新鮮でした。当時の読者もこういうところを面白がったのかもしれないなあ、と思うと楽しくなってきてしまいます。

 そういうこれぞ「新訳」らしいところは次の「ハートの7」にも現れていて、第一巻に登場していた外枠の人物の一人はどうやらルブランであったらしく、彼が聞き手の少女に解説するという形で当時の政治情勢が詳しく紹介されています。「ハートの7」というと、何が起こっているのかなかなかわからないところと鮮やかな隠し場所が印象に残っている作品なのですが、この新訳だと機密の重大さもぐっと重みを増して伝わってきます。

 第三巻は「ハートの7」の続きと「遅かりしHerlock Sholmes」の模様。

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