今月号は現在でも容易に読める作品が多く、それ以外の未読作品にはたいしたものがありませんでした。
「21世紀の夢 新世紀の魚族―七つの大洋を駈ける潜水船―」高橋泰邦
――50年後の未来は、原子力潜水艦が発達し、目下の目標は「海図」の作成だった。
未来予想(希望)のエッセイ/小説。
「ベティアンよ帰れ」クリス・ネヴィル/矢野徹訳(Bettyann,Kris Neville)★★★☆☆
――自動車事故で両親と左手の自由を失ったベティアンは、やがてセルドン夫妻に引き取られ、すくすくと成長した。感性が人と違うところはあったが成績もよく、ベティアンは東部の大学に進学した……。
出会いや別れ、恋や進学、四季の移り変わり。そんな何でもない当たり前の魅力を、宇宙人という部外者の存在を通して再認識させられる、叙情的な一篇でした。
「ペンフレンド」ミルトン・レッサー/神谷芙佐訳(Pen Pal,Milton Lesser)★★☆☆☆
――三十三歳のマチルダが結婚相手として思い描いているのは、お伽噺の王子さまのような男だった。文通欄の熱心な信奉者で、これはと思う男性にせっせと手紙を書き、自分の夫はこうして見つけてみせると広言していた。
夢見る乙女なオールドミスが文通欄で見つけた男性に連絡もせずに直接会いに行くという無茶苦茶な筋には、ユーモアというより悪意を感じました。現実に不満をいだいて、いもしない理想の相手を夢見るのは宇宙人も同じ――という話なのですが、アイデアもひねりもなく、造りも粗く、訳文もおかしかったです。
「世界ファンタスティック通信 双生児の精神感能力」
「親善使節」アーサー・C・クラーク/大山優訳(Troulble with the Natives,Arthur C. Clark)
「宇宙人応答せよ サイエンス・ノンフィクション8」斎藤守弘
宇宙人からの電波(宇宙波)と、テレパシイについて。オカルトみたいなものです。
「宇宙スター名鑑 スペース・ファンサイクロペディア11」草下英明
星座を形作るそれぞれの星についての解説。あんまり星座図鑑とかでも、こういうタイプの解説はなさそうな気がします。
「S・Fらいぶらりい 洋書棚 ペーパーバック」
SF作品新刊紹介。ワード・ムーア(ウォード・ムーア Ward Moore)の『Greener Than You Think』というタイトルが気にかかります。ほかにフリッツ・ライバー『The Silver Egghead』や、新人J・G・バラード『The Wind from Nowhere(結晶世界)』など。
「追放者」エドモンド・ハミルトン/斎藤伯好訳(Exile,Edmond Hamilton)
「泰平ヨンの航星日記(第14回の旅)」スタニスラフ・レム/袋一平訳(Dzienniki Gwiazdowe,Stanisław Lem)
「エジプトの呪術ブーム(世界ファンタスティック通信)」
「迷子(3)」石森章太郎
「さいえんす・とぴっくす」
「宇宙震」マレイ・ラインスター/井上一夫訳(Things Pass By,Murray Leinster)★★☆☆☆
――光速に近いスピードで移動する宇宙船団が、太陽系に近づいていた。このままでは地球は消滅してしまう。前触れのように、宇宙震と名づけられた奇妙な災害が地球上の各地で起こっていた。その原因に、ブラディックだけが気づいていた。
人情SF「宇宙行かば」シリーズのラインスターによる、ハードSFもどき。拡時界装置というオールマイティな架空の装置が重要な意味を持っていたり、宇宙船を一日で作ってしまったりとか、いい加減としか思えません。
人類が原因不明の高血圧死に悩まされる話。
「緑の霧」宮崎惇
宇宙生物園に行った女の子たちがぼーとして帰ってきて、男の子たちは帰ってこなかった。
『月は地獄だ!(第3回)』ジョン・W・キャンベル・ジュニア/矢野徹訳(The Moon is Hell,John W. Campbell Jr.)
シャワー室を作ったり、ロケット・カーを作ったりと、もはや自由自在。
『SFマガジン』1962年7月号