『S-Fマガジン』2023年8月号No.758【《マルドゥック》シリーズ20周年】

『S-Fマガジン』2023年8月号No.758【《マルドゥック》シリーズ20周年】

「《マルドゥック》シリーズ20周年」

「カバーイラストギャラリー」

「『マルドゥック・アノニマス』精神の血の輝きを追い続けて」冲方丁

「20周年対談」冲方丁×寺田克也

「『マルドゥック・アノニマス』扉イラストギャラリー」
 

リアル・フィクションとは何か」前島賢
 そういえばそんな。売り文句もありましたね。ていうか「オタク青春文学」って言っちゃってるし。《プラチナファンタジイ》とかもそうだけど、早川書房はこうやって思いつきで言葉を作るから信用できない。
 

「少年期の終わり boyhood's end」三島芳治

SF作家×小説生成AI
「超光速の遺言」松崎有理

「「AI法廷の模擬裁判」企画対談」安野貴博×竹田人造
 

「筋肉の神に敬語はいらない」ジョン・チュー/桐谷知未訳(If You Find Yourself Speaking to God, Address God with the Informal You,John Chu,2022)☆☆☆☆☆
 ――週に四回ジムに通う主人公は、神と呼ぶべき体形と筋力の持ち主に声をかけられ、いっしょにトレーニングするようになる。なぜかスウェットの上下ですばらしい筋肉を隠している謎の男だ。一方、SNSでは、空を飛び弾丸を跳ね返す男が話題になりはじめる。男はひたすら、弱き者、特にヘイトにさらされるアジア系の人々を助け続ける。ところが、世論は警察から思わぬ逆風を受け……。(解説紹介文より)

 バットマンやスーパーマンみたいなムキムキ系ヒーロー、マッチョ、ゲイ、アジア人差別など、アメリカっぽい要素を並べてみましたという感じで、ぼく語りが気持ち悪い作品でした。解説等にも事情が一切記されていませんが、今月号掲載の翻訳小説はなぜかすべてアジア系作家によるものでした。著者は台湾出身のアメリカ在住作家。
 

「宇宙の底で鯨を切り裂く」イザベル・J・キム/赤尾秀子訳(Calf Cleaving in the Benthis Black,Isabel J. Kim,2022)★☆☆☆☆
 ――マイカとシームのふたりは、深宇宙のサルベージ業者。何らかの理由で乗員が全員死んだ世代宇宙船を見つけ、船内に積まれた資材や技術をあさり、最後は船体を切り刻んでスクラップとして売り払う。生まれ育ったステーションが解体されるときにおんぼろ船をかっぱらって、以来、こうしてふたりで暮らしている。マイカは自分たちサルベージ業者が死んだ世界宇宙船に群がる姿を、地球の海中で鯨が息絶えた後、海底に沈降したその死骸のまわりにつくられる生態系になぞらえる(もっとも、本物の鯨を見たことはないが)。そんなある日、まだ誰の手にも触れられていない無傷の死んだ世代宇宙船に、ふたりは一番乗りするのだが……。(解説紹介文より)

 著者は韓国系アメリカ人。火事場泥棒が生き残った子どもを見つけて情が湧いて――というしょうもない話。
 

「乱視読者の小説千一夜(80)イギリス版『スタンド・バイ・ミー』」若島正
 グレアム・ジョイス『The Tooth Fairy』
 

「魘魅蠱毒」パク・ハル/吉良佳奈江訳(염매고독,박하루,2021)★★☆☆☆
 ――呪術師・金壽彭が禁じられた蠱毒を利用しようとしたかどで処刑された。だが蠱毒を用いた証拠は見つからなかった。県監の崔強意は金壽彭に子どもがいたことを知り、もしや父親から証拠になるような何かを預かっているのではないかと疑ったものの、子どもは一言も口をきかなかった。

 韓国のスチームパンクアンソロジー『蒸気駆動の男――朝鮮王朝スチームパンク年代記』の一篇。舞台は韓国ではありますが、中国の歴史小説のように格好良く訳されています。
 

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