『氷の海のガレオン/オルタ』木地雅映子(ポプラ文庫ピュアフル)★★★☆☆

 自分は人と違う。誰もわかってくれない。でもおかしいのは自分ではなくほかの人たちだ――。

 幼児期から思春期にかけて誰もが通過するような、そんな屈折したコンプレックスを、そのままズバリ描いてしまった作品でした。

 ただの思い込みや一時の夢想などではなく、そういう種類の人間が存在するのだ――という前提で書かれています。だから、もしも自分が魔法使いだったら、とか、もしも異次元があったら、というのを事実として描くのと同じような意味で、これは紛れもなくファンタジーでした。

 子ども心に悩んでいる悩みを、「大人になればそんなの何でもなくなるよ」とアドバイスされたときの、やりきれなさ。未来ではなくて今悩んでいるのに! 大人になってもそんなの何でもなくならない、そういう種類の人間たちを作り出すことで、「大人になれば――」と言って逃げたりはせずに、真っ正面から問題に向き合おうとしているのが本書です。

 ただ、せっかく書き下ろしがあるのだから、「普通の人たち」の視点でも番外編を書いてくれたら、もっとフェアだしすっきりしたのに、と思ってしまいました。

 ちなみに木村紺神戸在住』のなかで、優等生で本好きの伏見さんが主人公に手渡す作品が本書なのですが、伏見さんというキャラがこの本を、というところがまた木村紺のあなどれないところです。

 斉木杉子、十一歳。自分の言葉を持つがゆえに学校に居場所のない少女は、「学校なんてなけりゃいい」と思った。そして、自宅の庭に生えるナツメの古木に呼びかける。時々、心にねじをまくように。ハロウ――。(「氷の海のガレオン」)/ヤングアダルト小説ファンの間で「何度も読み返したくなる一作」として語り継がれてきた名作に、書き下ろしを加えて文庫化。(カバー裏あらすじより)

 
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