『ミステリマガジン』2012年7月号No.677【アルセーヌ・ルパン&ルパン三世】

LUPIN the Third 峰不二子という女

モンキー・パンチ・インタヴュー」
 007っぽいものをやりたかったのがルパンの始まり。『千夜一夜物語』漫画化。

「「冒険家」アルセーヌ・ルパン譚の魅力」森田崇

「“類い希なる”ルパンへの旅」瀬名秀明
 『大空のドロテ』早く刊行してほしい。そしてルパンものの魅力をこれほど的確に表現した文章はないのではないでしょうか。

・「幼気な子どもたちは『ルパンの冒険』とか『ルパン対ホームズ』といったタイトルに目が眩んでつまらない作品から読んでしまうのだよ。しかも脂の乗り切った時期の作品は当時の国際情勢への理解が不可欠なのだから、どれほど初心者に不親切なのだ、おまえは。」

・「子どものころはなぜルパンが変名で登場するのかわからなかった。ルパンはルパンとして活躍すればいいのにと思っていた。しかしそれではルパンではないのだ。つねにこの世界では誰かが誰かを演じており、誰もがルパンを演じている。」
 

「近年のルパン事情」住田忠久
 未発表作品『アルセーヌ・ルパン 最後の恋』(Le Dernier amour d'Arsène Lupin)がフランスで刊行されたそうです。たぶんあんまり面白くはないんだろうなあ……とは思いつつ、それでもやっぱり読みたいです。

「初出版 アルセーヌ・ルパンの逮捕」モーリス・ルブラン/平岡敦訳(L'Arrestation d'Arsène Lupin,Maurice Leblanc,1905)
 ――思えばおかしな旅だった。無線電信がこんな知らせを運んできた。「貴船にアルセーヌ・ルパンあり。一等船室、金髪、右前腕に傷、一人旅、使っている偽名はR……」

 読み比べていないので細かい違いはわかりません。「ルパンの逮捕」はその作品の性質上ルパンのキャラが抑えめな作品。
 

「アルセーヌ・ルパンとは何者か」「モーリス・ルブランによるコナン・ドイルへの弔辞」モーリス・ルブラン
 

「群れ」アブラハム・ネイサン・ジュニア/山口雅也訳(〈謎〉の謎、その他の謎 第3回)
 ――群れは一斉に交差点を渡りだした。群れの成員一人一人の表情、顔の向き、動作、歩調も完全に一個の個体のようにシンクロしている。「何かの宣伝だよな――」「違うって。お前は感覚が鈍いから、まだわかっていないんだ――」

 リドル・ストーリー連載三回目。今回はミステリー・ゾーンふうに。
 

「ありがとうが言いたくて(第1回)」貴志祐介

「迷宮解体新書(第53回)柳広司」村上貴史

「ミステリ・ヴォイスUK(第55回)シャーロックふたたび」松下祥子
 

「書評など」
ピンチョン『LAヴァイスのほか、異色作家好きにお勧めらしい『フランクを始末するには』アントニー・マンマーセル・セロー/村上春樹訳『極北』は詳細は不明ながらかなりの傑作のようです。Jコレクションの先月の新刊法条遙『リライト』、倉数茂『始まりの母の国』は記念出版にふさわしくどちらも面白そうです。都筑道夫『黄色い部屋はいかに改装されたか? 増補版』についての評者の言葉、「あえてそのような時代だからこそ」「ミステリを窮屈なものにしてしまった」「誤読」という考えに同意。

武侠小説とミステリの融合作品として、中国の『冥海花』呉硃が紹介されてます。一作くらいはこの手のものも紹介してほしい。

◆ドラマ欄では『相棒』の脚本家による二作が紹介されてました。『ATARU』『リーガル・ハイの二つ。

◆DVDではデヴィッド・スーシェ名探偵ポワロ。『オリエント急行の殺人』ほか新作四話。『ハロウィーン・パーティ』の脚色はBBCの『シャーロック』企画・脚本家とのこと。
 

「短篇ミステリがメインディッシュだった頃(2) EQMM(II)」小鷹信光
 年次コンテストについて他。

「抹殺者と宝石商」ジェイムズ・ホールディング/小鷹信光(The Photographer and the Jeweler,James Holding,1966)
 ――マニュエルは通常の半分の値段で殺人を依頼された。しかも標的は女、後払い。マニュエルは標的に接触を試みた。依頼金の二倍を払えば命を救ってやると言って――。

 同じ殺し屋が主人公のシリーズ中の一篇。女を殺すと忘れるのに時間がかかるというこだわりと、規定の料金はきっちり手に入れるというプロの矜恃を守るため(?)に、まどろっこしいことをしています。これ一篇ではわかりづらいのですが、おそらくシリーズを通してそういうキャラクターとして描かれているのでしょう。
 

 


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