『ナイト・ランド NIGHT LAND』vol.2【ネクロノミコン異聞/モンスター・ゾーン】

ネクロノミコン異聞】

シムーンズの紅の書」マイクル・ファンティナ/夏来健次(The Red Book of Simoons,Michael Fantina,2010)★★★☆☆
 ――旧友のエプスフィールドが、かの稀覯書『死霊秘法《ネクロノミコン》』のなかの八ページを所有していて、それをわたしに譲ってもいいというのだ。「わたしの命はあと三日しかない」とエプスフィールドは言った……。

 すべての蔵書による死のカウントダウン。本好きにとっては悪夢のような呪いですね。
 

(怪物のイラスト)John Kenn ★★★★☆

 Don Kenn Gallery http://johnkenn.blogspot.jp/より。エドワード・ゴーリーを思わせる画風の、不気味でキュートな怪物たちが満載されてました。
 

「ヘスター伯母さん」ブライアン・ラムレイ/田中一江訳(Aunt Hester,Brian Lumley,1975)★★★★☆
 ――ヘスター伯母さんは一族の「爪はじき」だった。双子の兄弟のジョージ伯父さんと、心を入れ替える能力を持っていたからだ。そのせいでジョージ伯父さんに疎まれ、それを根に持ち悪戯を繰り返したのが決定的だった。

 ネクロノミコンとの関わりはいちばん薄く(ダシ程度)、独立した作品としてもオチのあるホラーとして楽しめます。伯母さんたちに起こったこととその後のことを考えると、眠れないほどの恐怖を覚えました。

「双子には似たようなことがあるってなにかで読んだおぼえがるんだ――デュマの小説の『コルシカの兄弟』みたいなものでしょ」
 

アルハザードの末裔」パトリック・ルティグリアーノ/野村芳夫訳(Alhazred,Patrick Rutligliano,2008)★★★☆☆
 ――イラクの遺跡でわたしと部下が遭遇したのは、死体の山と、アルハザードの末裔を名乗る老人だった……。

 イラク戦争が舞台となっている点を除けば、三作のなかではもっともオーソドックスなクトゥルーもの。
 

【モンスター・ゾーン】

「ピックマンの遺作」(Unfinished Business,Ron Shiflet,2008)★★★☆☆
 ――「購入した絵が本物のピックマンかもしれないんだ」本屋を訪れた男バルマーは、ブレナンにそう言った。バルマー後日カーニーに会いに来た。「あれは本物だった。展示するピックマンを警備してほしい」「報酬が適性ならな」「何だって?」「ジョークだよ」

 通俗ハードボイルドの文体で描かれるクトゥルー(^^;。トーゼンのことアクションを繰り広げることになり、クトゥルーというよりゾンビか何かみたいです。前号のクトゥルー特集ではなく今号のモンスター特集で採り上げたのも納得です。
 

「海が連れてきたもの」グリン・バーラス/安野玲訳(What the Tide Brings,Glynn Barrass,2009)★★★★☆
 ――ぼくは十六で、女の子との経験なんてまだほとんどなかった。夏休みの休暇中に、海辺のリゾート地でヘレンに出会った。いつ帰られてしまうかわからなかったんで、ぼくは焦ってた。そしたら彼女のほうからキスしてきた。

 なぜかまたクトゥルー(本篇の場合はクトゥルーの元ネタの方か?)。ちょっと謎めいた一つ上の女の子との、一夏の経験……のはずが。衝撃的な少女の一言。その一言ですべてが説明されていそうでされない、思わせぶりなところが余韻を残します。
 

ポートランド石のわが心」マット・レイション/増田まもる訳(Mine Heart of Portland Stone,Matt Leyshon,2009)★★★★☆
 ――民族音楽学の教授ジャクソンは、今まで聞いたことのない船乗りの歌を生徒から聞かされた。ジャクソンは現地に赴き、その歌の真贋を確かめることにした。

 教授自身が作中でラヴクラフトの名を出しているように、一見クトゥルーものに思えるのですが、実はイギリス・ポートランドに伝わるロイドッグ(Roydog)という魔犬をモチーフにした作品でした。作者が文章に凝りすぎていて読みづらかったです。
 

「失われた者たちの谷」ロバート・E・ハワード中村融訳(The Valley of the Lost,Robert E. Howard,1967)★★★☆☆
 ――ジョンはレイノルズ家で戦える最後の者だった。家族を殺したフレッチャーを撃ち殺し、弾丸ベルトを奪おうとすると、フレッチャーは洞窟のなかで起き上がり、奥からはおぞましい怪物たちの儀式が……。

 洞窟内で生き延びる太古の人間たち――何だか昔あった子ども向けの科学読み物みたいで懐かしい匂いのする作品でした。
 

「怪物の作り方」友野詳

貸本屋の恩人 私の偏愛する三つの怪奇幻想小説井上雅彦
 挙げられている『私が選んだもっとも怖い話』が気になった。「私」とはヒチコックのことであるらしい。

「Asian Horror Now(2) 中国の若手幻想小説家、哥舒意」立原沙耶
 「入れ子構造」「どれが現実で何が虚構なのか」。一部抜粋して紹介されていて、光と時間についての幻想的な説明が印象深い。

 ナイトランド 第2号


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