『いちご100%』『初恋限定。』『ハレルヤオーバードライブ!』『空が灰色だから』『のりりん』『青空エール』『僕等がいた』『ニセコイ』『ちはやふる』18・19

いちご100%』(全19巻)河下水希

 前に『オレンジロード』を読んだときに、ジャンプのラブコメつながりで気になっていた漫画です。ラブコメどうこうよりも、『げんしけん』のときにも感じた、サークル活動や学生生活のいいところだけを抽出して凝縮してような熱さと瑞々しさがぐっと来る漫画でした。本書の「夢」は映画と小説。高校三年間で自主製作映画を三本。パンツ多すぎて人には勧めづらいけれど。表現力がすごい。18巻、最終巻の一つ前。優柔不断で誰にするか決められない主人公・淳平が、控えめな女の子・東城の方から告白されてようやく心を決めてフることができた――という、はっきり言って最低の場面があります。そして直後に本命・西野にそのことを報告に行くという……。最低のはずなんですよ、本来は。でもなぜだか淳平がかっこよく見える。小畑健並みの画力のたまものでしょうか。
 

初恋限定。』(全4巻)河下水希

 上記作者による群像劇。群像劇という形を取ったために、冴えない主人公がなぜか美女にもてまくるという三角関係ラブコメの欠点が解消されました。作風自体もエロよりも恋愛寄りになったためパンチラ場面も減り、人にも勧めやすくなりました。ジャンプ本誌の方針で打ち切られてしまったらしいのですが、現時点での著者の最高傑作です。
 

ハレルヤオーバードライブ!』(1)〜(8)高田康太郎

 タイトルが恐ろしくかっこ悪いのが残念。高校生のバンドもの。多くの漫画では男主人公になるであろう無邪気チビがヒロイン役というのが珍しい。校風のせいで軽音部であることを隠して金属理化学研究部(メタりか)として活動を続けるメンバーたち。集中線を多用したライブシーンの迫力、ばらばらなライブ・ファッションのかっこよさ。個性的な仲間(メンバー)が増えていく、という漫画の王道。いま続きが楽しみな漫画の一つです。
 

空が灰色だから』(1)〜(3)阿部共実

 タイトルが気になって読んでみました。説明するのがむずかしい、ホラーあり人情あり恋愛あり(非)日常ありの短篇漫画。カバーデザインがちょっとアレですが、奇妙な味異色作家の小説が好きな人にはお薦めです。タイトルの由来は第三話「空が灰色だから手をつなごう」。母子家庭の一人娘は貧しくてゲームも買ってもらえないため友だちとも遊べない小学五年生・穂《みのり》のつぶやいた一言に、母親は……。第一巻おまけショートまんが「18歳の女のある日の感じたこと」は、風邪が流行っている図書館で起こった咳にまつわる笑い話。第二巻「信じていた」の残酷さも忘れがたい傷を胸に残します。逆転負けされて以来野球から遠ざかっているピッチャーに、幼なじみの女の子が発破をかける――という王道と思えて実は……。「私本当に最低だな/すまんかったな」という台詞が言える誠実さ健気さと、次のページの無言の行動が、ひりひりと痛すぎます。
 

のりりん』(1)〜(3)鬼頭莫宏

 『ぼくらの』『なにかもちがってますか』の著者による、人の死なない自転車漫画。とはいえ主人公は相変わらず屈折してます。自転車乗るやつは死ね。自分は死んでも自転車乗らない。というわけで、自転車の魅力に気づくまでがけっこう長い。部活ものとかだったら第一話で一目惚れ、な感じなんだろうけれど。でもそのおかげで、自転車に興味のないわたしでも、自転車好きのテンションに置いてけぼりを喰らわせられずに、主人公と一緒にゆっくりゆっくり自転車の魅力を学んでいけました。
 

青空エール』(1)〜(10)河原和音

 ジャンルとしては少女漫画。部活もの。ですが部活ものとしては少し特異な立ち位置です。主人公・小野つばさの所属するのは名門吹奏楽部なのですが、つばさが吹奏楽部に入りたかったのは、野球部の応援をしたかったから、という変わった理由でした。いつか吹奏楽から見た野球漫画、という側面も見られるのでしょうか。引っ込み思案で「いつも靴ばかり見てた」つばさを最初に信じてくれたクラスメイトの野球部員・山田大介のおかげで、「上を見れた。見上げた空は、青かった。」。少女漫画特有の都合のいい展開や人間関係はあるけれど、とにかく前向きで爽やかな作風が病みつきになります。
 

僕等がいた』(1)小畑友紀

 これは怖えーよ。ホラーだよ。基本的に言葉をストレートにぶつける人たちばかりだから、ぎすぎすして緊迫感があるというのもあるのですが、それより何より、キャラクターの目がヒツジ目。どうして瞳に三日月が。。。七美のクラスメイト、モテモテの矢野はいけすかないヤツ、山本さんは人を拒絶するところがある。山本の姉が矢野の元カノで、元カレとドライブ中に事故死したという事情があり……。目が怖くて、宇宙人が人間に化けているみたいな不気味さがあって、第一巻までしか読めませんでした。
 

ニセコイ』(1)〜(2)古味直志

 これもジャンプ・ラブコメの流れで読みました。これは完全に少年向けで、ヤクザとマフィアが休戦のために互いの息子・娘を恋人同士に見せかけるという設定からしてギャグ漫画です。幼いころにそれぞれペンダントと鍵を分け合い再会したら結婚しようと約束した少年少女。誰が約束の少女なのか……。「ザクシャ・イン・ラブ」という謎の言葉の意味だけが気になります。
 

ちはやふる』(18)(19)末次由紀

 17巻がちょっと細かい心理描写ばかりで退屈だったため、刊行されていたのにチェックし逃していた18巻をようやく読む。どうもわたしは、雲の上の戦いよりも、机くんやかなちゃんも出てくる部活ノリの方が好きなようです。顧問の先生も真剣になり、そして高校では避けて通れない進路の話も。かるたの外でも物語は動いています。そして19巻では成長した千早や真島の姿が。
 

         


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