有栖川有栖の長篇デビュー作。
やはりデビュー作だからでしょうか、犯人当てには力が注がれているものの、終盤までの盛り上がりが物足りない作品でした。現時点で読んでいるわたしは、レギュラー陣は死なないことやアリスの恋のゆくえを知っている、というのもあるのでしょうけれど。
途中で推理合戦するわけでもないし、序盤で江神さんの頭が切れるところを見せるわけでもないので、何となく人が死んで唐突に解決したような拍子抜け感がありました。
マッチから始まる犯人特定の論理は魅力的ですが説得力はぼちぼちといったところです。
ダイイング・メッセージの解読自体は作中で登場人物も言っているとおりどうとでも取れるのですが、そこにある種の先入観をからめたために、ダイイング・メッセージだけでは味気ない真相にあっと膝を打つような発想の転換をもたらすことに一役買っています。
帝都大学推理小説研究会のメンバーがキャンプをしている最中に火山が爆発した。陸の孤島と化した山中で、別の大学のメンバーが置手紙を残して姿を消した。そして別のメンバーが刺し殺されているのが発見された。地面には「Y」のような文字が残されていた……。犯人を特定する手がかりもなく、下山する手段もないままに、やがてまた事件が起こる……。