『ミステリー・ゾーン DVDコレクション』24・25(アシェット)

ミステリーゾーン』24「死神の訪れ」「水爆落ちる」「死人の靴」、「過ぎし日」(14号再録)、「33号機の漂流」(16号再録)

「死神の訪れ」(Nothing in the Dark,1962.1.5,ep81)★★★★☆
 ――死神の訪問に怯えて引き籠もっている老婆のもとに、助けを求めて若い警官が家の戸を叩いた。老婆は言った。人が死んだときに必ず見る人間がいて、自分にだけは見えるのだと――。

 ロバート・レッドフォードが若い警官役で出演。老婆の偏執狂的な言動のせいで、一瞬、舞台が陸の孤島か終末かと思わされていましたが、部屋の外では日常の世界が通常運行してました。どんな場所どんな時でもミステリーゾーンになり得るという好例でしょう。疑わしい人間をいったん疑惑の外に出しておくのはミステリーの作法です。
 

「水爆落ちる」(One More Pallbearer,1962.1.12,ep82)★★★★★
 ――地下100mの部屋で水爆の映像を流し、この世の終わりだと3人の客に思わせようとする大富豪レイディン。3人はかつてレイディンを軍法会議で追放した上官、放校した教師、私生活を非難した牧師だった。レイディンには同情の余地がないように見えたが……。

 自分の尺度でしかものを考えられないからこそ逆恨みをするのだとすれば、逆恨みによる復讐劇は当然の結果に終わりました。陰湿な復讐と毅然とした信念とのぶつかり合いが胸を打ちます。客観的な描写がないため一方的な主張の応酬に感じられてもおかしくないところを、どちらが正しいのか疑問の余地がないほどにレイディンのクズっぷりが際立っている脚本・演出が見事でした。
 

「死人の靴」(Dead Man's Shoes,1962.1.19,ep83)★★★★★
 ――他人の靴を拾って履いた浮浪者ネイトは、他人のようになってしまった。ウィルマという女のもとに行き、ダンという男のように振る舞う。やがてネイトはクラブに行き、バーニーという男をにやにやと見つめ出す……。

 チャールズ・ボーモント脚本。靴版『悪魔を憐れむ歌』。一瞬にして性格ががらりと変わるこういう役どころは、俳優さんが演じていて楽しそうです。何が起こっているのかは視聴者には薄々わかってはいるのだけれど、なかなかはっきりとは伝えずに、思わせぶりなチンピラのチョイ悪な演技で緊張感を高めてゆくのが素晴らしいです。あのシーンで、あり得ないことが起こったのだ、と視聴者にも信じさせてしまっています。サスペンスやスリルではなく、ハードボイルドやノワールな雰囲気が、これまでの『ミステリーゾーン』とは異なっていて新鮮でした。
 

ミステリーゾーン』25「狩りの最中突然に」「西部劇作法」「真夜中の遊戯」

「狩りの最中突然に」(The Hunt,1962.1.26,ep84)★★★☆☆
 ――ハイダー老人と猟犬リップはいつものようにアライグマ狩りに出かけた。だが今夜のリップは深追いし、川に飛び込んでしまった。老人もリップを追って飛び込んだ。翌朝、地面に穴を掘っている若者たちがいた……。

 自分が死んでいることに気づかない、というパターンはこれまでにもいくつかありましたが……このエピソードの場合は、犬は忠実な友だち、というところに焦点がありました。
 

「西部劇作法」(Showdown with Rance McGrew,1962.2.2,ep85)★★☆☆☆
 ――西部劇の撮影中、いろいろと注文をつけていた保安官役の俳優が、おかしな世界に迷い込んでしまった。目の前にジェシー・ジェイムズが現れ、これまでの映画で好き勝手にやってくれたお返しをたっぷりしてやろう――とすごむ。

 俳優が歴史上の本人からクレームをもらうというコメディ。
 

「真夜中の遊戯」(Kick the Can,1962.2.9,ep86)★★★★☆
 ――老人ホームで寂しく暮らすチャールズは、ホームの庭で子どもが遊んでいるのを見て、自分も子どものように楽しもうとしたが、乱心したと思われてしまう。だがチャールズはめげずに、真夜中にホームの老人たちを起こして、缶蹴り遊びを始める。

 過去や若さへの憧憬を扱った作品も多々ありますが、この作品に登場するのは、若い頃があったことすら忘れてしまったような老人たち。一人奮闘するチャールズが滑稽ですらありました。しかしながら、老人たちによる真夜中の缶蹴り遊びとその後の子どものシーンは、それだけで美しいものでした。
 

 [amazon で見る]
24024 25025


防犯カメラ