『ミステリマガジン』2015年12月号No.708【ダウントン・アビー 館をめぐるミステリ】

 ドラマ自体にはまったく興味がありませんが、「「ダウントン・アビー」と階級の箱庭」村上リコ、「執事とメイドの仕事 屋敷で働く家事使用人」久我真樹のエッセイ二篇が、イギリスの階級社会とお屋敷について学べて重宝します。
 

「ティリング・ショーの謎」アーネスト・ブラマ/宮澤洋司訳(The Tilling Shaw Mystery,Ernest Bramah,1914)
 ――盲目の探偵カドラスは父の自殺の真相を探ってほしいと娘に頼まれる。(惹句より)

「白昼の強盗」ロバート・バーナード/武藤陽生訳(Daylight Roberry,Robert Barnard,1989)★★★☆☆
 ――英国内の一般公開されている邸宅格付けでも下から数えたほうが早いウールミントン卿のハーデイカー邸。それでも卿は日々まばらな観光客たちから少額の料金を取っては邸内を案内していた。ところがあるときを境に観光客の数が増え始める。その背景にはカーベリー伯爵夫人の陰謀があった……。(解説紹介文より)

 立派なお屋敷ではなく落ちぶれたお屋敷が舞台。悲哀のなかにユーモア漂う一篇。
 

ビーフのクリスマス」レオ・ブルース/小林晋訳(Beef for Christmas,Leo Bruce,1957)
 ――巡査部長のビーフは莫大な遺産を浪費する老人から相談を受ける。(惹句より)

「おとなしい女」H・C・ベイリー/宮澤洋司訳(The Quiet Lady,Henry Christopher Bailey,1927)★★☆☆☆
 ――レジー・フォーチュン氏がバートウィルス医師の庭園を見に来たところ、医師の患者が急死した。死因はアトロピン系のアルカロイド、傍らには「動けない。リリ・ディーンが持ってきた飲み物だ。私は死にかけているようだ……」というメモ書きが残されていた。

 今回の特集は〈館〉ということで、黄金時代の作品が多くなるのもわからないではないのですが、この作品なんかはほとんど館は関係ありません。
 

「ジョンとライゲイトの大王烏賊」北原尚彦
 ――田舎に静養に赴いたジョンとシャーロックの前にダイオウイカを巡る謎が!(惹句より)
 

三谷幸喜による『オリエント急行殺人事件』ドラマ、1月に放送!」
 2015年1月11日・12日、第一部が『オリエント』、第二部がオリジナル・ストーリーとのこと。

「迷宮解体新書(84)秋吉理香子
 

「書評など」
ベン・H・ウィンタース『カウントダウン・シティ』は、『地上最後の刑事』三部作の第二作。ダフネ・デュ・モーリア『いま見てはいけない』は、三笠書房から出ていたデュ・モーリア短篇集『真夜中すぎでなく』の新訳版。若竹七海『さよならの手口』は葉村晶シリーズ最新作。『キャプテンサンダーボルト』伊坂幸太郎阿部和重の合作。

『ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌』神山典士は、話題先行(というかそれしかなかった)事件の真実と全貌を明らかにしたノンフィクション。

◆新保教授の復刊・新訳レビューはチャンドラー/村上春樹訳『高い窓』。もはやレビューでも何でもなく自分語りである。

『心理学者こころ女史の分析 卒業論文と4つの事件』七菜なな
 ラノベ。切り絵(風?)の表紙イラストに惹かれます。「ホームレスの美少女探偵と中年刑事とが活躍する」受賞作が、「そのマニアックな内容に編集部の意向でお蔵入りとなり、主要キャラクターを移植して」生み出されたという経緯も面白い。

◆DVDコーナーからは、名探偵ポワロ ニュー・シーズンDVD-BOX 5』。デビッド・スーシェ主演シリーズの最終エピソード。
 

エル・ドラドの不思議な切手」ロバート・アーサー/小林晋訳(The Marvelous Stamps from El Dorado,Robert Arthur,1963)★★★★☆
 ――モークスはかつて稀少な切手を持っていたが、郵送するのに使ってしまったという。父の遺品のなかに切手のコレクションがあり、鮮やかで現実的な景色が描かれていた。切手の上端にはエル・ドラド連邦国と記載されていた。ハリーには切手を集めている甥がいる。ひとつこの切手を貼って手紙を出してやろう――手紙が消えた直後、電話がかかってきた。

 「51番目の密室」「ガラスの橋」といったトリッキーな小品でお馴染みのロバート・アーサーによる幻想譚。何のことはないそのものズバリのエル・ドラド行きの切手の話なのですが、「ない」ものが「なぜなくなったのか」を説明するためのホラ話をさてどうでっちあげようか――という読み方をしてニヤリとしました。
 

  


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