『KAWADE 夢ムック 総特集 泡坂妻夫 からくりを愛した男』文藝別冊(河出書房新社)★★★★★

 表紙は和服姿に煙草を手にした泡坂妻夫。表2・表3はマジックを披露している泡坂妻夫の連続写真。本文内にブラックユーモアイラスト多数。

{特別対談}「からくり師・泡坂妻夫北村薫×法月綸太郎(司会・横井司)
 益子直美さんのラジオ紹介がきっかけで2013年に『しあわせの書』が突然売れ出したということを初めて知りました。『乱れからくり』に『曲がった蝶番』の「ジョン ファンリー卿」の名が出て来るという遊びがあるということを北村さんの指摘で初めて知りました。

エッセイ
「こういうのが読みたかった」皆川博子
「探偵小説《ミステリ》と奇術《マジック》――泡坂さんの思い出」綾辻行人
「すべてマジック」恩田陸
「めくるめく扉」近藤史恵
孔明は死すとも」新保博久

「よろこびの書」米澤穂信
 『妖女のねむり』について「「彼がしたこと、彼が言ったことのみを描き、その結果の感情の揺れ動きは最小限に留められている。それでいて物語はしっとりと色づいているのだ」という指摘を読んで、また読み返したくなりました。
 

東洲斎写楽厚川昌男
 何と泡坂氏が高校三年生のとき生徒会雑誌に書いた文章です。家業が紋章上絵師なのだからもともと江戸文化に造詣が深くても不思議はないとは思うものの、びっくりしますね。

「♡の7」「ハートの2」「クラブの4」厚川昌男
 「奇術研究」に発表された、厚川昌男名義の小説。三作すべてにマジシャンの松尾さんが登場します。「♡の7」は、プロバビリティを利用したマジックを見て、自分が殺されかけていることに気づく男の話。「ハートの2」には、子どもによるトランプ用語の錯誤を利用した、成立条件が限定されるマジックが登場します。「クラブの4」で披露されるのは、舞台にマジシャンが登場せず、あらかじめ吹き込まれたテープレコーダーが、観客の選んだカードを予言するというマジックです。トラブルが演者の意図以上のさらなる効果をあげているところに、いっそうのユーモアが生まれていました。

「かげろう飛車」泡坂妻夫
 暗号小説集『秘文字』に暗号で収録されたのち、扶桑社文庫版『斜光』に通常の日本語で収録されたものの再録です。

「中井さんと奇術と暗号」泡坂妻夫
 中井英夫と暗号小説集『秘文字』にまつわるエッセイ。

{座談会}「新進作家大いに語る」赤川次郎×栗本薫×泡坂妻夫(司会・権田萬治)
 『幻影城』1978年9・10月号に掲載された、デビュー間もないころの三者の座談会。『三毛猫ホームズの推理』のトリックを、三人とも考えていた、というエピソードに笑いました(^^。トリック観、ミステリ観、名探偵観、お三方とも当時すでにしっかりしたものを持ってらしたことがわかります。

論考
「論理《トリック》の魔術師 泡坂妻夫小論」権田萬治
「国産ミステリ史における泡坂妻夫の位置」日下三蔵

 「本格ミステリ冬の時代」を、正確には「リアリティに囚われない本格ミステリ冬の時代」だと考え直したうえで、『幻影城』以後それに変化が訪れることを指摘しています。泡坂氏によれば『砂のアラベスク』は「ハードボイルドのつもりで書きました」だそうです。

泡坂妻夫と『亜愛一郎の狼狽』」長谷部史親
 

エッセイ
「亜愛一郎も狼狽――中井英夫未投函泡坂妻夫宛書簡」中井英夫

 中井英夫が酔っ払って書いた亜愛一郎のイラストと泡坂氏宛ての手紙。本多正一氏提供&註記。

「泡坂さんに関する二、三」竹本健治
 「おつきあいは、実はそれほど深いものではない」とは言いつつも、やはり『幻影城』出身同士、中井邸でマジックを披露した話や酔っ払った中井英夫氏のエピソード、『匣の中の失楽』やアンチ・ミステリに対する泡坂氏の小説観など、当事者ならではの思い出話は貴重です。

「泡坂さんのことを少し」田中芳樹
泡坂妻夫のこと」竹谷正
「律儀な人 泡坂妻夫島崎博

 

「プロフィール・泡坂妻夫栗本薫
泡坂妻夫――活字づくりの寄席」連城三紀彦

 再録エッセイ・

{対談}「お父さん、お父さん」厚川耀子×島崎博(聞き手・本多正一
 2009年4月20日に泡坂邸でおこなわれたプライベートな話を、遺族の了解を得て初文章化したもの。奥さんの耀子さんも現在はすでに故人となられています。葬儀のときの連城三紀彦氏のエピソード。よくわからないけれど泡坂氏とは独特の絆で結ばれていたんだろうなあ
 

インタビュー「ちゃぶ台という宇宙」ナポレオンズボナ植木パルト小石
 マジシャンの目から見た泡坂妻夫。『しあわせの書』の売り上げについてぼやいているのが可笑しい。マジックについて「スタンダードはやってたけど、あとはオリジナル。考え出すのが好きだったんだよね」という指摘にしろ、酔っ払ってマジックを披露する「プレミアム・タイム」にしろ、好きでやってたのが伝わって来るようないいエピソードです。

論考
「奇術における体験について――『しあわせの書』と『生者と死者』」横井司

 『トリック交響曲』所収のエッセイを一部引き、そこに益子直美氏の体験を重ねて、「奇術を通して人と人とがつながるという益子の体験は、泡坂を喜ばせたことだろう」と結んでいる文章には、胸が熱くなります。

「よみがえる古の春――泡坂作品のエロティシズム」垂野創一郎
 

「『乱れからくり』解説」中井英夫/「もくもくもくと雲、雲、雲――中井の追加、いつの意かな」本多正一
 中井英夫による『乱れからくり』解説の再録と、創元推理文庫版に追加された解説の文章は実は本多氏によるものだったという打ち明け話。

論考
「書かれなかった亜愛一郎の長編」野地嘉文
「捕“物”帳を論じる捕“者”帳――『宝引きの辰捕者帳』小論」末國善己

 

インタビュー「お父さんのこと」厚川文美(次女)
 タモリが好きだったとか、京極夏彦も読んでいたとか、演技をさせてヤラセの運動会ビデオを撮ったり、折り紙でコマ撮りアニメ「さんぽさんかく」を作ったり(残念ながら「お友達に貸したまま戻ってきてない」そうです。。。)、と、娘さんだからこそのエピソードが楽しいのですが、ミステリ作家・泡坂妻夫ファンとして興味深いのは、『バイオハザード』について「小説だと主人公って死なないですけど、ゲームだと簡単に死んじゃうので面白かったみたい」という非凡な発想でした。
 

「わたしの好きな泡坂作品 Best3」綾辻行人日下三蔵近藤史恵・横井司・ほか

泡坂妻夫のできるまで」野地嘉文
 泡坂邸訪問。新聞・雑誌の切り抜きや、「DL2号機事件」などの草稿ノートなど。

泡坂妻夫作品ガイド」垂野創一郎
 

  


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