『図説フランス革命史』竹中幸史(河出書房新社ふくろうの本)★★★★☆

 ふくろうの本シリーズではまだフランス革命は出ていなかったっけかな?といぶかりつつ手に取ってみたところ、なるほど最新の研究が反映されているのですね。

 絶対王制とは何なのか、フランス革命ブルジョワ革命だったのか――といったところから革命期の歴史を政治経済産業生活もろもろにわたって解きほぐしてゆくので、当時のフランスを理解するのと相まって、へたな歴史小説よりもよほど臨場感がありました。

 だからバスティーユ襲撃やヴァレンヌ逃亡などは意外とあっさりした記述です。球戯場の誓いの実際の風景を描いた絵画と比較し、ダヴィドが描いた球戯場の誓いの政治的意味を明らかにしたりなど、従来の定説やイメージをひっくり返すことに筆が割かれています。

 独裁を敷いていたイメージのあるロベスピエールジャコバン・クラブに触れた章では、民衆・輿論の力が紹介され、革命期にはそもそも独裁を敷けるような状況ではなかったことがわかります。

 マラーの死を描いた絵画を何通りか示して、事件に対する時代による価値の変遷を追っているところも興味深く、ナポレオンによるイメージ戦略と合わせて、いかに国民を味方につけるかが大事だというのがよくわかります。

 そして最後には現代日本へ通じるアクチュアリティも示されていました。既得権益者を「アリストクラート」になぞらえ、「われわれも、あまたのアンシアン・レジームに直面している」と説きます。ただ、日の丸と君が代にまで脱線しちゃうのは……つい筆が滑ったという感じでした。

 総じてフランス革命については常識として知っている人向けの書籍です。

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