『珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る』岡崎琢麿(宝島社文庫)★★★☆☆

 第一作と比べても謎解きに無理のある作品が増えてしまった感があるのと、美星のキャラが安定していないのが気になりました。
 

「第一章 拝啓 未来様」
 ――氷山嬢の姉のところに、別れた彼氏から新居宛てに手紙が届いた。だが手紙の消印は引っ越しをする一か月も前の日付になっていた。

 方法よりもむしろ「なぜ?」のほうに重みの置かれた作品でした。
 

「第二章 狐の化かんす」
 ――美星さんの妹・美空さんが京都に遊びに来た。伏見稲荷のお山めぐりをした美空さんが撮った写真には、つい先ほどふもとで見かけたばかりの中学生が写っていた。

 中学生が美星さんのほうを覗き込むようにして見ていた理由から時系列を類推するところがスマートでした。
 

「第三章 乳白色のハートを壊す」
 ――美星さんにラテアートの弟子入りを志願した高校生・巴奈。調理部の発表会当日、巴奈が目を離した隙に、ハートのラテアートがぐちゃぐちゃに壊れていた。

 ものの見方を変えるだけで事件の構図がくるりとひっくり返る、こういうタイプの作品は大好きです。
 

「第四章 珈琲探偵レイラの事件簿」
 ――タレーランを取材に来たライターを藻川氏が接客中。美星とアオヤマには気になることがあった。盗作騒動のために稀覯書となった『珈琲探偵レイラの事件簿』を、なぜ美空が持っているのか?

 盗作疑惑を受けたという作中作があまりにも残念な出来なのは、捨てネタだからと手を抜いたわけではなく、残念な作中作作者を投影しているのでしょう。実際、そんな作中作作者の適当さが美星の推理の手がかりになったわけですし。
 

「第五章 (She Wanted To Be)WANTED」
 ――美空の後輩・凛が行方不明になった。付き合っていた男にふられたせいだろうか。美空たちが手がかりを探しに訪れた凛の部屋には鍵が掛かっていなかった。

 第一章・第二章といい、時間の不可能犯罪(?)ものが目立ちます。それにしてもこんなふうに世界が狭くなると、犯罪者もミステリ作家もたいへんそうです。
 

「第六章 the Sky occluded in the Sun」「第七章 星空の下で命を繋ぐ」「エピローグ 彼女はカフェオレの夢を見る」
 ――美空が誘拐された。無事に返して欲しくば一千万円を用意しろ――。美星たちはアオヤマに送られてきたメールから美空の居場所を推理しようとする。

 これまでの幕間、そして第五章の電話に関するエピソードもちょろっと関わる大団円。正直な話、誘拐事件に発展するのは無理くり過ぎではとも思いましたが、それだけ犯人の残念な人っぷりは明らかではありました。

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