『きんきら屋敷の花嫁』添田小萩(角川ホラー文庫)★★★★☆

 第8回『幽』怪談文学賞・長篇部門特別賞を受賞した『この世の富』を改題したものです。なぜこんな魅力のないタイトルに改題したのかは不明です。

 天涯孤独な知花が嫁いだ先は、一見したところでは座敷童を祀る旧家のように見えましたが、その実は妖怪でもなければ土地の精霊でも神ですらない、大地そのものとでもいうような存在でした。

 ですから当然、契約もない。人間の側が契約だと思って守ってきた決まり事が、むしろ「いつもおなじ」だからと訣別を告げられる原因になってしまっていたのが皮肉でした。

 破滅が訪れたあと一人だけ正常だと思われた語り手の、前向きかつ陽性とはいえちょっと病みがちのバイタリティが、不思議な読後感を残しました。

 平凡で天涯孤独な27歳の知花に、縁談が舞い込んだ。資産家の飯盛家の長男に気に入られたのだ。広大な森に囲まれた屋敷、外部との接触を嫌う家族や親類たち。知花は義母らから一族に伝わる決まりごとを学んでいく。そしていよいよ年に1度の重要な仕事、ひとり暗い森に分け入って“あるもの”を得てくることを教えられた――。選考委員一同が前代未聞の怪異と驚嘆し、『幽』怪談文学賞特別賞を受賞したきんきらゴシック・ロマンス!(カバーあらすじより)

  ・[楽天]


防犯カメラ