『アンメット』1、「かるびのベランダ」オガツカヅオ『ネムキプラス』2021年5月号
『アンメット―ある脳外科医の日記―』(1)子鹿ゆずる原作/大槻閑人漫画(講談社モーニングKC)
『ハコヅメ』『スインギンドラゴンタイガーブギ』と同じく『週刊モーニング』連載漫画です。原作者は元脳外科医。正直なところ第一話を読んだかぎりでは、天才脳外科医でかなりの変人によるよくある漫画という印象でした。それが変わるのが第二話です。「命が助かるだけではダメなんですよ」「世話焼きではなく……これが仕事です」。三瓶は仕事中毒《ワーカホリック》というから学問以外は人間にも患者にも興味はありません――というこれまたよくある感じなのかと思っていたのですが、そこまで含めて「仕事」中毒ということだったのかと、見事に裏を掻かれました。ヒロイン(?)だと思われた川内先生も、三瓶の変人ぶりに眉をひそめながらも惹かれてゆくというこれまたよくあるキャラクターなのかなと勘繰っていたのですが、意外な事実が明らかになります。医者側にこういうキャラクターを置くことで、これまでの医療漫画とは違うドラマが生まれそうです。「失語症」のエピソードはよくある医療漫画に戻ってしまいますが、2巻に収録されるであろう星前先生を掘り下げたあたりでまた盛り返したりします。
『Nemuki+ネムキプラス』2021年5月号(朝日新聞出版)
オガツカヅオの読み切りが掲載されているため久々に購入。
「伊集院月丸の残念な霊能稼行」魚住かおる
久々に読んだら黒田さんが馬鹿になってる。みちるのダウジングに付き合って道に迷い、たどり着いた無人駅で、電車を乗り過ごしたと語る訳ありの女性と出会います。三人で隕石を探しにいくものの、見つかるのは各々の思い出の品ばかり……。ネタ自体はありがちな話ですが、吐き出した錠剤を流れ星として表現することで【ネタバレ*1】を明らかにするのは気の利いた表現でした。隕石探しというギャグはそのための布石だったようです。それにしても原因を作ったみちるはやっぱり大馬鹿でした。表紙になるのは初めてというのは意外でした。
「かるびのベランダ」オガツカヅオ
ずっと「化け物」と言われ続けてきた。無人の団地のベランダで寝泊まりしたつもりだったが、そこには住人がいた。それからわたしとタムラ老人との窓ガラスを隔てた共同生活が始まった。決めの絵がいかにもオガツカヅオといった感じで、怖い内容の話ではないし怖い存在でもないはずなのに不気味な感じに描いてあるのが味があります。【ネタバレ*2】でも【ネタバレ*3】でもないちょっとズレたところも健在です。かるびの事情を知れば扉絵でかるびが電線に乗っている理由も理解はできるのですが、背景が戦闘機による爆撃になっている理由がわかりません。それだけ長生きということ? でも「兄弟たちと同じように生きられないと教えられた」のコマにいる通行人は現代人っぽいしなあ。謎です。
「ひよりの草子」(11・12)
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*1臨死状態
*2タヌキ
*3キツネ