意識だけがタイムトリップするという設定が珍しいのですが、そのほうが矛盾なく辻褄を合わせるには好都合で、そうでもなければここまで複雑なことはできなかったでしょう。
主人公の翔香は危険が身に迫ると無意識に安全な時間に移動してしまうため、一週間を目まぐるしく行ったり来たりです。そもそもどうして時間移動してしまうのか――自体がはじめのうちは謎でもありました。
謎の解明以前に現状把握と現状維持だけでも一苦労なのに、植木鉢が落ちてきたり車に轢かれそうになったりといった危険を避けながら、タイムパラドックスを起こさないように気を付けながら謎と原因をさぐろうとする過程に、目が離せません。
そしてすべてのきっかけである日曜日――。真相自体はさほど驚愕するものではありませんが、きっちり組み立てられた物語に、読み終えたときの満足感が味わえます。
鹿島翔香。高校2年生の平凡な少女。ある日、彼女は昨日の記憶を喪失している事に気づく。そして、彼女の日記には、自分の筆跡で書かれた見覚えの無い文章があった。“あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい……”/若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。半信半疑ながらも、彼は翔香の記憶を分析する。そして、彼が導き出したのは、謎めいた時間移動現象であった。“タイム・リープ――今の君は、意識と体が一致した時間の流れの中にいない……”/第1回電撃ゲーム小説大賞で〈金賞〉を受賞した高畑京一郎が組み上げる時間パズル。遂に、文庫に跳躍《リ−プ》!!(カバーあらすじ)
若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。クラスメイトの鹿島翔香に起こっている不可解な記憶の混乱を分析した彼は、翔香に告げた。“タイム・リープ――今の君は、意識と体が一致した時間の流れの中にいない……”/タイム・リープ。意識だけの時間移動現象。正常な時から“剥がれて”しまった翔香の『意識時間』。その謎に和彦は迫る。だが、浮かび上がった事実は、翔香を震感させた。“そんな……嘘よ……”/第1回電撃ゲーム小説大賞で〈金賞〉を受賞した高畑京一郎が組み上げる時間パズル。最後のピースが嵌る時、運命の秒針が動き出す――。(カバーあらすじ)
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