『Down River』John Hart,2007年。
ジョン・ハート作品で初めて読んだ『ロスト・チャイルド』は傑作でした。次作『アイアン・ハウス』は、著者の持ち味であるらしい愛情の存在が甘ったるく感じられました。遡って出世作である本書を読んでみましたが、やはり持ち味がマイナスに作用してしまっています。
無実の罪で地元から逃げ出した若者が、友人(?)に助けを求められてなぜかひょこひょこ戻ってくるところから物語は始まります。
で、この地元というのが田舎×アメリカの悪いところを詰め込んだような、田舎根性と気取った会話に満ちた世界なので、主人公がかつて殺人の汚名を着せられたという事実がまったく活かされていませんでした。
もともと嫌なやつばかりなんです。人殺しだからではなく、もともと自分勝手で怒りっぽく偏見に凝り固まった人たちばっかりなうえに、主人公にしてからが開巻早々思い込みで危うく人を殺しそうになる始末です。
何かもっとこう、葛藤とかいがみ合いとか、ないものでしょうか……。まあ、すべてがゆるゆるなのは、地域社会=家族と言っていいくらいの田舎だからなのでしょう、たぶん。。。
どうも『ロスト・チャイルド』は、主人公が少年だったから成立し得た偶然の産物だったようです。
「僕という人間を形作った出来事は、すべてその川の近くで起こった。川が見える場所で母を失い、川のほとりで恋に落ちた。父に家から追い出された日の、川のにおいすら覚えている」殺人の濡れ衣を着せられ故郷を追われたアダム。苦境に陥った親友のために数年ぶりに川辺の町に戻ったが、待ち受けていたのは自分を勘当した父、不機嫌な昔の恋人、そして新たなる殺人事件だった。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作(カバーあらすじ)
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