『サマー/タイム/トラベラー 1・2』新城カズマ(ハヤカワ文庫JA)★★★☆☆

 時間SF(?)長篇。

 誰よりも(屁)理屈屋の登場人物がいみじくも「世の中に出回っているSFなんて、大半が工学技術の話」と不満を口にしていることからもわかるように、この作品のタイムトラベルは、(登場人物たちによる独自の理論はあるにせよ、そしてその理論が高校生らしからぬ小難しいものであるにせよ)、タイムトラベルによって科学的に何かが変わったり問題が生じたりするわけではありません。

 変な放課後活動に明け暮れ、未来や人間関係に不安を持つ高校生たちの青春小説であり、タイムトラベルはきっかけみたいなもので、作中で起こる事件も本質的にはタイムトラベルとはほぼ無関係でした(「タイムトラベル」の代わりに何かほかの要素を持ってきても成り立つと思う)。

 ヒロイン宅の店の名前〈夏への扉〉をはじめとして、全篇SFへの愛に満ちていました。

 あの奇妙な夏、未来に見放されたぼくらの町・辺里《ほとり》で、幼馴染みの悠有《ゆう》は初めて時空を跳んだ――たった3秒だけ未来へ。「お山」のお嬢様学校に幽閉された響子の号令一下、コージンと涼とぼく、そして悠有の高校生5人組は、「時空間跳躍少女開発プロジェクト」を開始した。無数の時間SFを分析し、県道での跳躍実験に夢中になったあの夏――けれど、それが悠有と過ごす最後の夏になろうとは、ぼくには知るよしもなかった。(1巻カバーあらすじ)
 

   


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