『銀の匙』（15）荒川弘（小学館少年サンデーコミックス）
最終巻。あとがき漫画によれば、もともと高校編のみの予定だったそうです。駒場とも再会し、会社も前に進み、後輩にもたすきを渡せて、まずはきれいに終わったと思います。もっと読みたかったけれど。
『スキップとローファー』（3）高松美咲（講談社アフタヌーンＫＣ）
兼近先輩だったり、江頭ミカだったりと、前の巻あたりから掘り下げられてきたキャラの魅力がさらに深められています。みつみといると周りのみんなの魅力も引き出されますが、志摩くんが元気ないからとお土産を三つあげるみつみがやっぱりいちばんほっこりします。
「ファイアバグ」広田凪（講談社『アフタヌーン』2020年5月号）
――福永さんは死んでいる自分を見た……と思ったそのとき、世良くんが「事故は俺が消しておいた。もう少しで元の世界に復帰できる」と言った。世の中には想像したことを含む並行世界を呼び寄せてしまう力が人一倍強い人間がいるという。世良はそんな「放火魔」が起こした災害を「火消し」していた。だが福永は世良の言うことを信じようとしない。
四季賞出身作家のデビュー読み切り。個人が引き起こしたバグを修正してこの世の理を保ち続けようとするグループという設定自体はどこかで見たようなものですが、肝心のバグを引き寄せてしまう女の子が「放火」なんて信じなくてちょっとズレててマイペースなので、話がまっすぐ進まないところが面白いです。
『おとなになっても』（2）志村貴子
渉の実家で同居することになった綾乃。いろいろな人にばれるし（というか正直に言うし）、朱里と綾乃は辛抱のかけらもありません。
『アルマ』（2）三都慎司（集英社ヤングジャンプコミックス）
ギジンが手を出せない人間「ゼロ」だったレイは、本国へ送られますが、ルキアナの兄たちは何かを企んでいる様子……。初登場した第１巻に引き続いてルキアナが格好いいのと対照的に、レイはここまで情けない主人公がいただろうかというほどに情けないです。だけど感情に素直な分、決めるときは決めるんですよね。最後には第一話に登場したにゃーにゃーたちの正体が判明します。
『インハンド』（3）朱戸アオ（講談社イブニングＫＣ）
「フローラの軛」は、認知症治療の論文捏造疑惑。なんだかいろいろなタイプの悪人が登場しています。放火殺人犯、捏造犯、金儲け信者、告発＆脅迫者。すっきりしない結末でした。「プシュケーの翅」ではいつも牧野と一緒にいる黒服サングラスの恵良が活躍……するのでしょうか？
『BADON』（2）オノ・ナツメ（ビッグガンガンコミックス）
宣伝のためにとドラマの撮影に協力したプルミエラの面々でしたが、事件に巻き込まれてしまいます。この巻まるまる使った長篇ミステリです。有能そうに見えるハートがちょこちょこポンコツで可笑しい。
「目をあけてねれるよ」佐倉旬（講談社『good！アフタヌーン』2020年5月号）
――５組の山田密緒はちょっと変な女の子。田中は告白されて付き合うことになった。いまは願いを叶えてもらうために悪魔を呼び出したいという。振り回されながらも、少しずつ密緒に惹かれてゆく田中だった。
第16回四季賞新人戦。エキセントリックな人をただの奇人変人ではなく魅力的に描くのはけっこう難しいのではないかと思うのですが、田中くんの素直さにも助けられて、山田さんの真っ直ぐさが引き立っています。山田よりも少し長く生きてもはや真っ直ぐではいられない山田の姉の存在も大きい。こうした現実的な登場人物がいるから、対照的にちょっとくらい夢見たっていいじゃないかという気持にもさせられるのです。
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