『翼のジェニー ウィルヘルム初期傑作選』ケイト・ウィルヘルム/伊東麻紀他訳(アトリエサード/書苑新社)★★☆☆☆

 河出文庫の『20世紀SF』に「やっぱりきみは最高だ」が収録されていたケイト・ウィルヘルムの短篇+中篇集ですが、今となってはだいぶ古びてしまっているのは否めません。
 

「翼のジェニー」佐藤正明訳(Jenny with Wings,Kate Wilhelm,1963)★☆☆☆☆
 ――翼があるため人並みの恋も家庭生活も学生生活も送れなかったジェニーが、初めて本当の恋に落ちた。自分は子どもが産める身体なのか、翼があるのにどうやってあれをするのか、医者に相談に訪れた。

 アイデアもストーリーも陳腐なのはいいとして、あるいは思春期ゆえの不安を「人とは違う〈翼〉」に託したものかと捉えるにしても、その心理描写すらお粗末(という以前に皆無)という、気持ち悪い作品でした。
 

「決断のとき」安田均(A Time to Keep,1962)★★★☆☆
 ――ハリスンはドアを開けるたびにのっぴきらない状況から逃げ出してしまう幻覚を見るようになってしまった。

 悪夢と現実が交互に繰り返されるところはまるでミステリーゾーンのようです。
 

「アンドーヴァーとアンドロイド」安田均(Andover and the Android,1963)★★★☆☆
 ――独身男は出世できないため、個人では所有が禁止されているアンドロイドを秘密裡に嫁代わりにしたロジャー。ロジャーはアンドロイドのリディアにいつしか心を奪われていた。

 ある意味そのアンドロイドは完璧であった、ようです。
 

「一マイルもある宇宙船」安田均(The Mile-Long Spaceship,1957)★★☆☆☆
 ――アラン・ノーベットが目を覚ますと、病院のベッドの上だった。「じっとしていてください。事故で頭の骨が折れたので手術しなけりゃならなかったのです」 事故? 船に事故が発生することなどあり得ない。事故に遭ったなら宇宙空間で死に絶えているはずだ。

 地球上にいる一個人の精神が、時空を越えた宇宙人と接続して……。
 

「惑星を奪われた男」増田まもる(The Man Without a Planet,1962)
 

「灯かりのない窓」増田まもる(No Light in the Window,1963)
 

「この世で一番美しい女」伊藤麻紀訳(The Most Beautiful Woman in the World,1968)★★☆☆☆
 ――目をあける前に、彼は去っていた。「本当だった。きみはこの世で一番美しい女だ」……会議はもう始まっているはずだった。ひとりが青あざに目を留め、医師が呼ばれた。会議が終わると、写真を撮られた。
 

「エイプリルフールよ、いつまでも」尾之上浩司訳(April Fool's Day Forever,1970)★★☆☆☆
 ――二度の死産は殺人なのだ、とジュリアは考えた。ジュリアは神秘的な考えに囚われて自分で病院を探し始めた。やがて夫のマーティはドクター・ワイマンから異様な話を聞かされる。

 本書唯一の中篇。タイトルは、人類を守るための(支配者側に都合のいい)嘘、ということのようです。

  


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