文庫創刊50周年とは言いつつ創刊第一弾はSF文庫なので、ミステリ文庫はまだ44周年、NV文庫でも48周年でした。
「読者を育てた文庫の軌跡をたどる」三橋曉
「ハヤカワ文庫創刊50周年エッセイ」有栖川有栖・池上冬樹・恩田陸・新保博久・月村了衛・山本やよい・若竹七海・他
月村了衛氏のエッセイは端が断ち切れてしまっているので早川書房のホームページで完全版が公開されています。
「ハヤカワ文庫創刊50周年 今後の話題作」
陸秋槎『文学少女対数学少女』、クイーン『フォックス家の殺人』『十日間の不思議』が刊行予定。
「おやじの細腕翻訳まくり(19)」田口俊樹
「五年で戻ります」マイケル・ギルバート/田口俊樹訳(Back in Five Years,Michael Gilbert,1948)★★☆☆☆
――すばらしい出来栄えの偽造一ポンド紙幣が出回っていた。質屋での使用から足が付き、容疑者が浮かび上がった。マウントジョイ氏の職業は印刷業だった。隣人のクランプ氏からの評判は悪く、反対に店の二階に住んでいたアイルランド夫人からの評判はよかった。家宅捜索令状を取って乗り込んだが、ドアに「五年で戻ります」という貼り紙を残して当人は消えてしまった。
犯罪小説系が多いこの連載にしては謎めいた雰囲気の魅力ある内容だったのですが、最後の最後に安っぽいトリックものになってしまいがっかりです。
「ミステリ・ヴォイスUK(120)お菓子とムスメ」松下祥子
「書評など」
◆『探偵は御簾の中 検非違使と奥様の平安事件簿』汀こるものは、メフィスト賞作家による平安ミステリ。平安ミステリというと『薫大将と匂宮』『千年の黙』が思い浮かびますが、源氏ものではない平安ミステリは珍しいのでは。
◆『愛の言い換え』渡邊彌生は、元アイドルが書いたというと色物っぽく感じてしまいますが、著者はもともと小説を書いていたそうで、「あえてカテゴリに当てはめれば、ニューロティックスリラー、ディストピアSF文庫の格好をしていたり、謎が興味の一環となる作品もあって、本誌読者にも読んでいただきたい多彩な顔」の作品集。
◆『時のきざはし 現代中華SF傑作選』は、立原沙耶編による中国・台湾SFのアンソロジー。SFマガジンやミステリマガジンでもお馴染みの作家から、未知の作家まで全十七篇。