『キネマトグラフィカ』古内一絵(東京創元社)☆☆☆☆☆

 ミステリでないのはともかく、冒頭60ページにわたって続く五十代おじさんおばさんのだべりを読むのはとてつもない苦行でした。会話を通して古いタイプの映画会社について説明している……という側面もないことはないのですが、ほとんどが同窓会のノリでした。キツイなあ。。。

 それでも、舞台が回想に移って「フィルムを時間までに九州の映画館に届ける」という目的や「リレーその××」という章題から、ドタバタサスペンスみたいのを期待したのですが、過去篇に入ってもやはり心底どうでもいい個人個人の“ボクたち一生懸命に生きてます!”が延々と続くだけでした。

 葉山学が事務員を誘ったところだけはちょっとロマンチックな男気にあふれていて印象に残りました。
 

 老舗映画会社に新卒入社した“平成元年組”六人の男女が、二〇一八年春、ある地方の映画館で再会する。

 今はそれぞれの道を歩む同期の彼らは、思い出の映画を鑑賞しながら二十六年前の“全国フィルムリレー”"に思いを馳せる。

 映画がフィルムだったころ、六人は自分の信じた道を必死に前に進もうとしていた。

 フィルムはデジタルに、劇場はシネコンに。四半世紀の間に移り変わる映画の形態。そして映画と共に生きた彼らの人生もまた……。

 あのころ思い描いていた自分に、今、なれているだろうか――。

 追憶と希望が感動を呼ぶ、働く人すべての心を熱くする傑作エンターテイメント!(カバー袖あらすじ)

  


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