『鬼滅の刃』(23)吾峠呼世晴(集英社ジャンプ・コミックス)
最終巻。バトル描写で魅せる漫画ではないのに、全員が協力して代わる代わる休むことなく攻撃を続けて最後まで突っ切ったのが爽快でした。本当の意味で全員でボスを倒す漫画って意外と少ないような気がします。大抵は最後に主人公が一人で立ち向かい、気合いか何かで倒すというパターンのような。モブから死者まで、最後まで全員の力でした。
恋柱の力持ち設定がようやく活かされたのもよかったし、腕を失くした炭治郎と義勇が協力して赫刀を出すのも熱かった。「返せよ」から「できねえ」を経てボカボカボカに至るまで伊之助も見せ場だらけでした。とうに覚悟を決めているとはいえ炭治郎が迷わず確実な相討ちを狙うのも、「主人公=安全」という漫画に慣れているとぎょっとしました。無惨を倒す場面に生きて居合わせたのに、力尽きて死んでしまう人たちがいるのも衝撃でした。現実的に考えれば大けがをして助からないのは当たり前なのですが。22巻でも逃げるという選択肢を取って驚かせてくれた無惨ですが、これだけなりふり構わないボスというのも新鮮でした。
204話と205最終話は、連載時にカットされた原稿が単行本で追加されているそうです。204話には炭治郎たちが家に戻ったときの様子と、残された者たちへの隊士たちの遺書が追加されていました。バックナンバーで確認してみましたが、連載時だといきなり現代に飛んじゃっていて何だかわかりません。必要な追加でした。あれは誰かの遺書なんでしょうけれど、誰もが同じ思いを抱いているということで、誰もの遺書でもあるのでしょう。普通であれば臭い内容になるところですが、思いを繋ぐというこの作品のテーマとぴったり合致しています。
205話には炭治郎の子孫が生まれ変わりについておばあちゃんと話したことを夢で思い出しているシーンが追加されていました。こちらはなくても話は成立することは成立しますが、過去から未来へ繋ぐという意味でこれも大事な場面でした。
本篇の最後に描き下ろしイラストと描き下ろし漫画が収録されています。思い出のカットは飽くまで漫画ではなくイラストという扱いのようですが、思い出から始まってまた隊士の遺書の続きという流れは完璧でした。単なるオマケじゃなくてしっかり本篇を補完・完結させている、著者としての責任感みたいなものを感じます。
『鬼滅の刃 外伝』平野稜二(集英社ジャンプ・コミックス)
「冨岡義勇外伝」と「煉獄杏寿郎外伝」の外伝二篇と、4コマ漫画「きめつのあいま」が収録されています。それぞれ義勇&しのぶ、柱になる前の煉獄&甘露寺の物語です。義勇の「俺たちは柱だ」については原作者の補足がありましたが、煉獄外伝の桜の匂いについては何のコメントもありませんでした。そこを補足するのは作画者の漫画がわかりづらいと明言してしまうのと変わらないので、補足しようにも出来ないのでしょう。
『モーニング』2020年12月10日号No.52(講談社)
「ハコヅメ(143)雲上人の啓示」泰三子
「奥岡島事件の恩賞」シリーズの功績を讃えられて本部長賞を授与されることになった川合たち三人による、笑ってはいけない授与式でした。ここぞというところでシリアスになるのはさすがです。それにしても川合は相変わらずいろんな意味で大物でした。連載3周年記念で、表紙&巻中カラーに加えて著者インタビュー付。代原がきっかけで連載にこぎつけたんですね、強運の持ち主です。第35話の終盤はページが余って描いたというのは驚きました、全然違和感ありません。インタビューを見るに、著者だけでなく担当さんも独特な人ですね。
「スインギンドラゴンタイガーブギ(26)ビッグチャンス」灰田高鴻
とらのデビューのチャンスに、利己的ではなく熱くなる丸山が格好いいです。事情を知らないとらからすれば「最高にかっこ悪い」ことになるのでしょうけれど。喧嘩別れしてしまった二人を再び結びつけるのは、タモさんなのか……?
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