『今昔百鬼拾遺 河童』京極夏彦(角川文庫)★★★☆☆

『今昔百鬼拾遺 河童』京極夏彦(角川文庫)

 初出媒体が『幽』『怪』だったためか、冒頭から女学生による河童談義が始まります。多々良先生も登場して、全篇にわたって久しぶりの妖怪蘊蓄が披露されていました。とは言っても掘り下げられたものではなく、河童の基礎知識みたいなものですが。

 女学生のあいだで噂になっている、便所で尻をさわろうとする怪。男ばかりが狙われた連続覗き魔事件。探偵・益田を訪れた蝋細工師は、奇妙な仕事のことを語った。不正に手に入れたものを高貴なお方に返すため、模造宝石を作ってほしい――。要領を得ない話はやがて、尻を丸出しにされた溺死体という連続猟奇事件へと発展する。事件を追う益田と敦子が関係者の地元を訪ねると、多々良と美由紀に再会する……。

 敦子自身が話す順番について自答しているように、女学生の河童談義から始まって川と尻ばかりが表に出て来ているために、なかなか事件の正体をつかませません。ようやく時系列に沿って事件が整理されてからも、誰が被害者で誰が加害者なのか、それと事件の様相が一致しないままです。

 すべてが明らかになってみれば、犯人グループの利害に対する認識のズレが事件のちぐはぐさを引き起こしていたとわかります。このズレが尾を引いて生まれたのが、現代の水死事件で、その因果応報な真相には、そんな偶然あるか?と思いつつも面白いと感じました。【瀕死の被害者が移動先で死亡した】川瀬の死に際といい、【事故だった】連続水死事件といい、この規模で起こっているのは珍しいのではないでしょうか。

 昭和29年、夏。複雑に蛇行する夷隅川《いすみがわ》水系に、次々と奇妙な水死体が浮かんだ。3体目発見の報せを受けた科学雑誌「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田が調査中の模造宝石事件との関連を探るべく現地に向かった。第一発見者の女学生・呉美由紀、妖怪研究家・多々良勝五郎らと共に怪事件の謎に迫るが――。山奥を流れる、美しく澄んだ川で巻き起こった惨劇と悲劇の真相とは。百鬼夜行シリーズ待望の長編!(カバーあらすじ)

  


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