時代小説と本格ミステリの融合だと期待していたのですが、ミステリとしては珍品もいいところでした。
「第一話 龍を探せ」
――上総屋のあるじが龍と書かれた紙を握り締めて恐怖のあまり死んでいた。「いまわのきわのお告げ」ではないだろうか。龍のつく関係者が怪しいと古知屋同心は考えたが……。
いまわのきわのお告げとはダイイング・メッセージのことです。ひらがなしか読めなかった被害者が漢字の書かれた紙切れを握り締めていたというダイイング・メッセージの謎は面白いものの、死因と殺害方法があまりにも馬鹿らしく、ずっこけてしまいました。
「第二話 謎の二人組」
――蔵の錠前が開けられた跡はなかったのに、中の金目のものはすっかりなくなっていた。外からの侵入は不可能なため、袋小路に住んでいる者が怪しい。事件当夜、現場近くをすごい勢いで荷車を押して走り去る二人組が目撃されていた。
これも二人組の正体が馬鹿らしい。
「第三話 大むささびの影」
――見世物師が捕えた大むささびに逃げられたという報せを聞いて、江戸中が恐れおののいた。
前二話に比べると構図が複雑でしたが、やはり中心となる仕掛けが馬鹿らしいのは否めません。
「第四話 馬はいずこ」
――堀に囲まれた武州屋のあるじ夫妻と番頭が殺された。馬の足音が聞こえたことから、馬で門を飛び越えたのだろうと考えられた。現在の武州屋のあるじはひとでなしだという評判だった。
馬は馬でも――というのは読んだことがありますが、これはそれよりももう一つの趣向【※ネタバレ*1】が際立つ作品でした。