『S-Fマガジン』2021年8月号No.746【1500番到達記念特集 ハヤカワ文庫JA総解説 PART1[1~409]】
日本の昔のSFにはまったく興味がありません。
「乱視読者の小説千一夜(71)我輩はカモである」若島正
「SF BOOK SCOPE 他書評など」
◆『ポストコロナのSF』には、小川哲・津原泰水などが寄稿。テレビ番組を書籍化した『世界SF作家会議』もコロナ。
◆『三体Ⅲ 死神永生』は、三体シリーズ完結編。
◆ほかにはリサ・タトル『夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件』、平井呈一訳『恐怖 アーサー・マッケン傑作選』など、怪奇系に収穫のある月でした。
「人とともに働くすべてのAIが知っておくべき50のこと」ケン・リュウ/古沢嘉通訳(50 Things Every AI Working with Human Should Know.Ken Liu,2020)
「魔女の逃亡ガイド――実際に役立つ扉《ポータル》ファンタジー集」アリクス・E・ハーロウ/原島文世訳(A Witch's Guide to Escape: A Practical Compendium of Portal Fantasies,Alix E. Harrow,2018)★★☆☆☆
――『逃げ出した王子』は九〇年代に出たYAファンタジーのひとつだ。たいていの人は主人公が扉を見つけもしないうちに読むのをやめてしまう。でもこの子は違う。あぐらをかいて座り込んでいたその少年は、『逃げ出した王子』を持ち帰り、二回オンラインで延長手続きをした。世界史上、二種類の司書しか存在したことはない。本とは自分の所有物で利用者は本を盗みにきた犯罪者だと信じている無情な司書。または魔女だ。人がいちばん必要としている本を渡せるように、わたしは最善をつくす。
本を必要としている人に必要な本を届けるという、小説と司書の持つ本来の機能を描いているはずなのですが、冷静に考えると気持ち悪い。
「大森望の新SF観光局(79)ハヤカワ文庫JA、最初の百冊」
「主観者(前篇)」春暮康一
「電信柱より」坂崎かおる
第三回百合文芸小説コンテスト「SFマガジン賞」受賞作。
「七億人のペシミスト」片瀬二郎★★★☆☆
――世界は変わった。ここ数年いろんなことがありすぎた。そしてこんどは巨大隕石が来週あたりに世界のどこかに墜落するんだとか。どこかの政府がミサイルを打ち上げて軌道を変えようとしているというニュースの一方で、ネットの有識者とやらの解説だと成功確率は五パーセントがいいところらしい。どっちにしても結果をたしかめるために学校の屋上に忍び込んで天体望遠鏡で見るつもりだった。なのにスタンガンを持った覆面の男たちに襲われ、堰田たちは気を失ってしまった。しかも花田だけはまだ目を覚まさない。
人間の脳には世界を変える力があるという説を信じている七億人のペシミストが、超弩級のオプティミストである花田を眠らせておいて、隕石の落ちるに任せようとするという、冗談のようなアイデアが楽しい作品でした。
「働く種族のための手引き」ヴィナ・ジエミン・プラサド/佐田千織訳(A Guide for Working Breeds,Vina Jie-Min Prasad,2020)
[amazon で見る]