『首のない女』クレイトン・ロースン/白須清美訳/山口雅也製作総指揮(腹書房 海外ミステリ叢書〈奇想天外の本棚〉)★★☆☆☆

『首のない女』クレイトン・ロースン/白須清美訳/山口雅也製作総指揮(腹書房 海外ミステリ叢書〈奇想天外の本棚〉)

 『The Headless Lady』Clayton Rawson,年。

 ロースンは大好きな作家で、長らく創元推理文庫版が絶版のまま復刊もされずにいたので、今回の新訳は嬉しかったのですが、久しぶりに読んだロースンは、びっくりするほど下手くそでした……。

 サーカスネタ、隠語ネタ、思わせぶり――ぽこぽこと出てくる登場人物がそうしたどうでもいい会話を入れ替わり立ち替わりしてゆくので退屈きわまりません。上手くいっていたならテンポのよい会話と場面展開となるはずなのですが、展開が早いわりに無駄話が長すぎました。

 グレート・マーリニが経営する〈奇術の店〉に、ひとりの女性がやってきた。彼女は「首のない女」の奇術に使う装置をどうしても買いたいという。女性の謎めいた行動に好奇心をかき立てられたマーリニは、友人の作家ロス・ハートとともに彼女のあとを追う。やがて、大ハンナム合同サーカスへとたどり着いたふたりを待っていたのは、団長のハンナム少佐の事故死の知らせだった。だが、その死には不審なところがあった……。少佐の死は事故か殺人か。「首のない女」とは誰なのか。呼び込みの口上、綱渡りに空中ブランコ、剣呑みに透視術にいかさまトランプ――華やかなサーカスの裏で渦巻く策謀に、奇術師探偵マーリニが挑み、窮地に立たされる。奇術師作家ロースンの仕掛ける大胆な詐術に驚愕せよ! 不可能犯罪の巨匠ロースンの最高傑作が、今ここに新訳でよみがえる!(カバーあらすじ)

 はじめのうちは首のない女という舞台奇術の道具がどんなものなのかさっぱりわからなかったのですが、どうやら胴体を切断して首と胴体のあいだに何もないように見えるマジックの、首から上がないように見えるバージョンのようです。

 前半はかなり退屈です。事故死ではありえない状況で見つかった自動車事故死体も、サーカス団員の転落事故も、何かを必死で隠そうとしている団長の娘も、誰がどんな人物でどんな状況なのか説明も掘り下げもないまま書かれてゆくので、誰がどうでもいいとしか思えないのです。象のパニックにしてももっと盛り上げればいいのにさらっとしていて場面転換が下手すぎます。

 ようやく面白くなるのは、象使いの過去が明らかになるところでした。これまではどうでもいい人たちだった登場人物に、ようやくどろどろした緊迫感を感じることができました。対立構造はやっぱり盛り上がります。

 そこから先はマーリニの脱出劇という喜劇あり、マーリニが巻き込まれた事件の全容が明らかになり、一気に解決篇へとなだれ込みます。

 ロースンが下手なりに上手いところは、序盤の隠語ネタもただの無意味なペダントリーではなかったところだったり、ただのサービス精神に思えるマーリニの脱出劇もその逮捕劇のどたばたによって真犯人の行動が制限されたりと、きちんと意味を持たせているところですね。小説としての見せ方が下手くそなだけで。

 ただ、意味を持たせるといえば、首のない女の装置は現実的には意味がないのではないでしょうか。【顔を隠す】ためとはいえ、舞台以外で結局サングラスをしているのなら無意味なような……。う~ん、ただ単にサングラスをしている変な人、ではなく、常にサングラスをしている変わり者の劇団員の一員ということに意味があるのかなあ。

 すべて終わってみれば、マーリニは事件の一部を裏から見ていたことがわかります。それだと序盤が退屈なのは仕方ない気もします。突っ込んだことを書いてしまうと表の構図が明らかになりかねませんし。尻すぼみ感の多いロースン作品にしては、序盤が退屈で徐々に面白くなってゆくという珍しい読後感でした。【※殺された恐喝犯の弁護士が金を持って逃亡、恋人とともにかつて在籍していたサーカスに身を寄せる。弁護士は道化師の白塗りの下に隠れ、恋人は顔のない女として顔を隠した――というのが表の事件。自動車事故殺人その他の事件は、金ほしさに弁護士カップルを追う探偵が、うっかり殺人とその隠蔽を重ねた結果

  


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