『ライオン・キング』(The Lion King,米,2019)★★★☆☆

ライオン・キング』(The Lion King,米,2019)

 ディズニーアニメのフルCGリメイク作品。

 CGもここまで来たのか、という圧巻の映像です。何の前知識もなく観たので、台詞に合わせて口が動く以上はたぶん実写じゃなくてCGなんだよなあ……というレベルでした。虫の動きなんかはまだ不自然ですが。気持ち悪くならないようにわざと作り物っぽくしてるのかな。ライオン勢と比べると、ハイエナは個々の特徴を出そうとしすぎて表情が人間くさすぎました。あとはギャグシーンをどうするかでしょうね。この映画ではギャグシーンは人間くさくすることを選んだようですが。

 直接的な残虐描写はないのですが、映像がリアルなだけに結構エグく感じるところもありました。

 オリジナルのアニメ版を観たことがないので比較はできない代わりに、ストーリーを新鮮に楽しめました。オリジナル公開当時は『ジャングル大帝』との類似が話題になってましたが、叔父による王殺しってのはむしろ『ハムレット』だよなあと思ったり。

 追放と帰還&復讐という王道は勧善懲悪にも似て小気味よいものですが、せっかくの王道を活かし切れていない感がありました。

 父王ムファサの死はもう少し何とかならなかったのでしょうか。あれじゃあとどめを刺したのこそスカーですが、スカーの言う通り実質シンバが殺したようなものでしょう。

 王国を逃げ出して草食動物たちと暮らしていたシンバが王に目覚めるシーンもあっさりしすぎていて説得力に欠けます。もっと豹変をドラマチックに盛り上げられなかったものでしょうか。

 シンバが真相を知る場面も、あれではスカーがただの間抜けでしょう。日本のドラマやアニメはクサすぎて見てられませんが、この作品の場合はもう少しクサく溜めて演出してもよかったのにと思ってしまいました。

 そもそも国土を収めている王っぽい描写があまりなかったうえに、最終決戦でも大臣みたいな鳥とシンバが逃亡先で知り合った二匹を別にすればライオンしか参戦してないので、これで王なの……? 何が王なの……?と思ってしまいました。

 シンバがムファサとの約束を破って影の場所にいったあとも、そこはもっと叱らなきゃだめでしょ?と疑問を感じてしまいました。王としての心構えを説くのは叱った後にすべきだし、シンバもやけに物わかりがよいし、なんだかじゃれ合って終わっちゃいました。

 元が子ども向けミュージカルアニメなので仕方ないのかもしれませんが、全体的に散漫で要素間がスカスカでした。でも映像だけでも2時間飽きずに見てられるので、映画としては満足でした。

 吹替えで見たので、音楽に合わせて無理に歌詞を当てはめるため言葉がメロディに乗っていなくて、音楽に関しては0点です。コーラスとボイスパーカッションが一つ一つ増えてゆく「The Lion Sleeps Tonight」だけはよかったけれど。

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