『月曜日の水玉模様』加納朋子(集英社文庫)★★☆☆☆

『月曜日の水玉模様』加納朋子集英社文庫

「月曜日の水玉模様」(1995)★★☆☆☆
 ――いつも電車で見かける青年は、スーツとネクタイを決まったサイクルで組み合わせていた。以前までは早い駅で降りていた青年が同じ駅で降りるようになり、会社の近くでも見かけるようになった。後輩の真理は一目惚れじゃないかと冷やかすが、社長は最近出没しているビル荒らしではないかと疑っていた。

 同僚の告白【※ネタバレ*1】とビル荒らしという出来事から、青年の正体を逆算的に導き出す【※ネタバレ*2】アクロバティックな推理が見事です。青年に世間知らずっぽい感じがあることもあって、最後はみんなでいい人になっちゃうところが著者の作品らしいとも言えます。
 

「火曜日の頭痛発熱」(1995)★★☆☆☆
 ――風邪で診療所を受診した萩と陶子は他人の薬を間違えて持ってきてしまった。二人は「笠間明弘」に薬を届けに行くが、会社の人間によれば笠間は現在人間ドックに入っているという。やがて笠間氏が現れて薬を受け取ったが、ワイシャツにはJ・Sというイニシャルがついていた。

 冒頭の患者の呼び出しから泡坂妻夫「歯痛の思い出」を期待しましたが、あまり関係ありませんでした。他人の名前で薬をもらう謎は、日常の謎を越えてかなり大きな真相【※ネタバレ*3】が隠されていましたが、陶子のオシゴト小説じみた日常感と頭脳明晰な非日常がアンバランスで、すっきりしな違和感ばかりが残ります。
 

「日曜日の雨天決行」(1998)★★☆☆☆
 ――運転手が薬を飲まされ大型トラックが盗まれるという事件を萩は調査していた。積荷が信用に関わるため警察には届けられないらしい。元ソフトボール部員の陶子は取引先とのソフトボール大会に駆り出されてしまった。雨天決行したわりには両チームとも素人ばかりでまるで打てず、最後はじゃんけんで勝負する始末だ。

 接待野球の相手チームメンバーという【ネタバレ*4】を集団でやる発想や、雨天決行による【ネタバレ*5】など、トリック自体は面白いのですが、やはりオシゴト小説と企業犯罪という取り合わせがミスマッチです。そのせいで小説としてのピントもはっきりせず、陶子も苦労人OLなのか名探偵なのかどっちつかずでした。

 まったく肌に合わなかったので「水曜日の探偵志願」「木曜日の迷子案内」「金曜日の目撃証人」「土曜日の嫁菜寿司」は読んでません。

 いつもと同じ時間に来る電車、その同じ車両、同じつり革につかまり、一週間が始まるはずだった――。丸の内に勤めるOL・片桐陶子は、通勤電車の中でリサーチ会社調査員・萩と知り合う。やがて二人は、身近に起こる不思議な事件を解明する〈名探偵と助手〉というもう一つの顔を持つように……。謎解きを通して、ほろ苦くも愛しい「普通」の毎日の輝きを描く連作短篇ミステリー。(カバーあらすじ)

  




 

 

 

*1 横領

*2 横領金の返還もしくは保険金入手のため社長が雇った調査員

*3 内部告発者の同僚が会社に毒を盛られているのではないかと心配して薬を入手した

*4 見えない人

*5 アリバイ作り

 


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