『ブルーローズは眠らない』市川憂人(創元推理文庫)★★☆☆☆

『ブルーローズは眠らない』市川憂人(創元推理文庫

 『The Blue Rose Never Sleeps』2017年。

 デビュー作『ジェリーフィッシュは凍らない』に続く、マリア&漣シリーズ第二作。

 本書はそれぞれ「プロトタイプ」と「ブルーローズ」と題された二つのパートから成ります。

 両親のもとから逃げ出した虐待児は、遺伝子組み換えによる青い薔薇の誕生に成功したテニエル博士に拾われ、エリックと名づけられて家族同然に育てられます。アルビノの夫人ケイトと一人娘アイリスにも愛され、幸せを噛みしめていました。地下に閉じ込められていた「実験体七十二号」を不注意から逃がしてしまうまでは……。

 一方、マリアと漣は『ジェリーフィッシュ』事件で知り合ったドミニク刑事から非公式の依頼を受け、偶然の品種改良から青い薔薇を生み出したロビン・クリーヴランド牧師と、遺伝子組み換えにより青い薔薇を生み出したフランキー・テニエル博士に話を聞くものの、やがてテニエル博士が首を斬られた状態で発見されます。青い薔薇のある温室は密室状態でした。

 読んでいる最中に気になるのは二つのパートの関連性でした。青い薔薇を作り出したテニエル博士。「実験体七十二号」の存在。アイリスとアイリーン。ロニー・クリーヴランドとロビン・クリーヴランド。二つのパートは同じようでいて少しずれています。単純に考えれば真相のような事しかない【※ネタバレ*1】のですが、そう単純に思えない理由が、二つのパートがあまりに似すぎているという点と、実験体七十二号をはじめとした超科学の存在です。人造人間が存在する世界でないのであれば、「プロトタイプ」の世界は作中作ということになりますし、そう考えれば二つのパートの矛盾も解消されます。ところがこのシリーズの作品世界は現実とは少し違う世界だけに、人造人間が存在しないとも言い切れないところがあります。

 人造人間の真相は、あっけないものでした。なるほど物の見方と語りというのは書きようによって如何様にも誤解させられるものなのですね。あっけないけれど、シリーズの世界観を活かしたこの騙しは好きです。

 二つのパートの謎が似通っていた理由は、多少強引だとは思います。【※ネタバレ*2】――思いますが、謎としては魅力的でした。

 密室殺人の謎は、さすがに密室ありきの密室なのでは……と思っていたら、そもそもがありきの計画だったというのにはひっくり返りました。それだけのためにそんな複雑な計画を立てたの?……とがっかりしていたら、実はもっと大きな枠組みのなかの一部だったというのも、ちゃんと本格ミステリの範疇に収めてくれていてほっとしました。ただ、さすがに複雑すぎるし強引すぎました。

 ジェリーフィッシュ事件後、閑職に回されたフラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣。ふたりは不可能と言われた青いバラを同時期に作出したという、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査することに。ところが両者と面談したのち、施錠されバラの蔓が壁と窓を覆った密室状態の温室の中で、切断された首が見つかり……。『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!(カバーあらすじ)

  




 

 

 

*1 二つのパートは時代が違う。

*2 過去である「プロトタイプ」の事件をなぞることで、当時の犯人にだけわかるメッセージ(脅迫)を送ろうとした。

 


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