『幻想と怪奇』11【ウィアード・ヒーローズ 冒険者、魔界を行く】

『幻想と怪奇』11【ウィアード・ヒーローズ 冒険者、魔界を行く】

 失敗しました。毎号買っているのでよく内容を確かめもせず購入したところ、今回は苦手なヒロイック・ファンタジー特集でした。しかもジョー・R・ランズデールを除けば『ウィアード・テールズ』掲載作に限られているので、ロバート・E・ハワード、C・L・ムーア、シーベリー・クイン等、新しい顔ぶれは無し。

「A Map of Nowhere 10:「飢えた雪」のロッキー山脈南部」藤原ヨウコウ

「パル・サゴスの神々」ロバート・E・ハワード野村芳夫

「暗黒神のくちづけ(新訳)」C・L・ムーア/安野玲

「不死鳥の彼方に(新訳)」ヘンリー・カットナー/田村美佐子訳

ウィアード・テールズの女王――マーガレット・ブランテージの生涯」宮壁定男

「黒い蘭」シーベリー・クイン/熊井ひろ美訳

「半分だけ憑かれた家(新訳)」マンリー・ウェイド・ウェルマン/髙橋まり子訳

「緑の絹手袋」朝松健

「夜の魔翼(新訳)」ロバート・E・ハワード/植草昌実訳

「飢えた雪」ジョー・R・ランズデール/植草昌実訳(The Hungry Snow,Joe R. Lansdale,2021)★★★☆☆
 ――馬に乗ったメーサー牧師は騾馬ともども吹雪の中にいた。物音がしたかと思うと、岩や氷の塊が落ちてきて、騾馬は荷物ともども山道から崖下に落ちて消えた。足を進めるにつれ、焚火の明かりと洞窟の入口が見えた。男三人と、女と少年がいた。「食いものを持ってないか」「騾馬が崖から落ちてしまった」薪が山をなし、黒焦げの骨も一山あった。馬の骨だけではない。人間の骨もあった。「足止めされたどのくらいになる?」「山道をぬけられなくなって、ひと月はさまよった。吹雪は何週間も止まないし、ここで火を囲んでいるのには、ほかにも理由がある」「理由とは?」「あいつよ」と女が言った。もとから悪人だったが、人を殺してまで食べようとする者まで現れた。骨髄まで吸い出すような」「今の彼は媒体に過ぎない。ウェンディゴと呼ばれる山の精霊にとって代わられたのだ」

 ジェビダイア・メーサー牧師シリーズ。『ナイトランド』vol.4()にも「凶兆の空」が訳載されていました(「メルセル牧師」表記)。死んだ仲間の肉を喰らって生き延びているなか、人食いの化け物になってしまった者との戦いが描かれます。ゴーストバトルとは別に、骨髄まで吸い出されるとか食われるのを厭って自決するといったエグさが記憶に残りました。
 

「勇者カガセオ」深田亨
 ――小説家志望の雨下田スグルは、編集者の新刑彩子と名乗る女性から、『勇者』がテーマのアンソロジーへの寄稿を提案された。にわかには信じられなかったが、日本書紀に登場する香香背男を現代に移し替えた物語を書きあげて見せると、大絶賛された。

 《Le Forum du Roman Fantastique》創作。書かれざる幻の作品をめぐる作品。ここで伊藤計劃の名前を出すことにドン引きしたのですが、改めて確認すると、亡くなってからもう十年以上経つのですね。対決場面は《勇者》つながりでゲームっぽくしたのでしょうが、わけがわかりません。
 

「書評」
高原英理編『川端康成異相短篇集』、大濱普美子『陽だまりの果て』など。

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 幻想と怪奇11 


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