『くにさきの鬼』中川学絵(六郷満山日本遺産推進協議会)★★☆☆☆

『くにさきの鬼』中川学絵(六郷満山日本遺産推進協議会)★★☆☆☆

 大分県国東市の日本遺産「鬼が仏になった里『くにさき』」のストーリーPR絵本。

 まず「地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリー」という日本遺産の定義の「ストーリー」というのがよくわからなくて混乱します。

 実際、絵本自体も個々の鬼伝説にはまったく触れず、“くにさきには鬼の言い伝えがあるんだよ”ということしかわかりません。文化や伝統の魅力を伝えるのが目的だとしたら、本末転倒だとしか思えません。

 一応巻末には伝説や行事についての図解もあるのですが、それを絵本で見せてくれよ、というのが本音でした。

 巻末資料を見るかぎりでは、奇妙な形の岩山があって鬼の住処だと言われてきて、そこから各種の鬼伝説が派生したという印象を持ちました。それまで各地にあった不思議な事物が「鬼の仕業」で統一されたというか。

 そして肝心の鬼と絵本ですが、申し訳ないけれど、まったく魅力がありません。九州だからでしょうか、鬼のお面がかなり南方系のデザインであり、日本の妖怪っぽさが皆無です。ということはつまり中川氏の魅力も活かされ切れていない、ということになります。

 くにさきでは鬼は仏様に近いものとされている、と言われても、その背景なり何なりを説明してくれないと、ああそうですか、で終わってしまいます。

 https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/news/1367/ 
 くにさきの鬼 中川学


防犯カメラ