『紙魚の手帖』vol.17 2024 JUNE【謎解きの魅力、再発見! 初夏の翻訳ミステリ特集】

紙魚の手帖』vol.17 2024 JUNE【謎解きの魅力、再発見! 初夏の翻訳ミステリ特集】

白薔薇殺人事件』クリスティン・ペイン/上條ひろみ訳
 ――十六歳のとき、殺されると予言された通りに殺害された大叔母。彼女は、予言が的中したときのために、約六十年をかけて人々を調査していた。「正しい娘」が犯人を見つけると信じて――(扉惹句)

 冒頭掲載。
 

「現代海外謎解きミステリについて」若林踏

「2024年上半期翻訳ミステリの動向」古山裕樹

「祝祭日の死体」ピーター・トレメイン/田村美佐子訳
 ――聖人の亡骸に奇跡が? 修道女フィデルマが巡礼先で遭遇した不可解な事件(扉惹句)
 

「乱視読者の読んだり見たり(12) 鏡の回廊」若島正
 ロバート・エイクマン「The Insufficient Answer(不十分な答え)」に出てくるクリス・マッシー『鏡の回廊(Corridor of Mirrors)』。仏訳版や映画版は見つかるのになぜか原書が見つからないこの不思議な作品を巡って。
 

「翻訳のはなし(15) 時代」山田順子
 

「創立70周年記念企画 エッセイ わたしと東京創元社有栖川有栖加納朋子近藤史恵、野口百合子、東川篤哉、アンソニーホロヴィッツ
 

「第7回 日常生活殺人事件」熊倉献
 ――インフルの高熱で幻覚が見えてしまった五味さん。
 

「不死者の物語 ―女生徒」川野芽生
 ――父親のひとり、宿命者のイギシュの死をきっかけにリュリュは宿命者たちの集う寄宿学校で暮らすこととなった(扉惹句)

「みすてりあーな・のーと その4 追悼・岩崎正吾」戸川安宣
 

「亡霊」大倉崇裕 ★★★★☆
 ――倉橋保は居酒屋「いけず」ののれんをくぐり、お願いしていた「月の雫」を受け取って外に出た。再開発地区まで歩くと、出島安治がいた。「遅せえぞ」近づいてきた出島の額に、倉橋は瓶を叩きつけた。用意していたレンタカーでその場をあとにし、身につけていたもものを着替えてカツラと付けひげも外した。そうして「宿屋・舞良戸」と看板のある町家に入った。「お帰りなさい。藤堂さんがお待ちです」夜間担当のフロント係、近状が出迎えた。応接間に入ると、藤堂の連れに名刺を渡した。「笹口干城です。よろしくお願いします」。この瞬間、「倉橋保」はこの世から消え去った。

 福家警部補シリーズ。やむにやまれぬ事情があったのではなく、根っからの犯罪者思考というのはこのシリーズには珍しいような気がします。犯行の隠し方は大胆を通り越して無理筋だと思うのですが、実際、福家の聞き込みがきっかけとはいえ従業員にもばれているようでは遅かれ早かれではないでしょうか。冒頭の犯人パートで、額が落ちたときに激昂した場面の意味【※ポイントは割れたガラスではなく、靴の方にあった】にしても、決め手が犯人の考えとは別のところにあるところ【※笹口は額の指紋を気にしていたが、福家の狙いは血痕にあった】にしても、ミスディレクションと伏線が巧みでした。犯人自身がトリックに瓶の指紋を用いているため、指紋に気を取られてしまうのにも説得力がありました。
 

「第24回本格ミステリ大賞受賞作決定!」「受賞の言葉」青崎有吾・川出正樹、「選評」飯城勇三大倉崇裕佳多山大地東川篤哉・他
 

「対談 櫻田智也×今村昌弘 〈魞沢泉〉&〈明智恭介〉シリーズ最新作刊行記念」
 短篇集『六色の蛹』と『明智恭介の奔走』について。
 

「装幀の森(12)」柳川貴代

「INTERVIEW 期待の新人 羽生飛鳥『歌人探偵定家 百人一首推理抄』」
 好きな作家と作品に、クリスティ『鏡は横にひび割れて』とディクスン『貴婦人として死す』が挙げられていました。『邪馬台詩』を題材にした暗号ミステリや『ブラック・ダリア』事件を日本に置き換えたという構想中の作品もどちらも面白そうです。
 

「INTERVIEW 注目の新刊 青柳碧人『怪談刑事』」

「INTERVIEW 注目の新刊 ジョン・コナリー『失われたものたちの国』」
 『失われたものたちの本』の続編刊行。
 

「追悼・山本弘芦辺拓大森望
 

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